KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


宗教と文化 (奥田 敦

    2005年度春学期 金曜日4時限
    科目コード: 20160 / 2単位
    カテゴリ: 13.創造融発科目(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    「イスラーム」という宗教を軸にして人間、社会、文化、文明に対する捉え方を提示していく。
    アラブ・イスラーム世界の文化・社会をイスラーム的な視点から捉えなおすことによって、 イスラームあるいは宗教のありようについて考える機会でもある。
    一般にアラブ・イスラーム世界の紹介はオリエンタリズム的な先入観や「文明の衝突論」による異質性のみの強調、さらには旅行者的な印象の反復に終始する嫌いがあった。 2001年9月11日以降、イスラームおよびイスラーム世界は、圧倒的にマイナスのイメージを負わされるようになってしまい、イラクに対する開戦以後もなおその傾向は加速している。その一方で、イラクへの自衛隊派遣は、地域に対するより実相に即した把握の必要を訴えてもいる。こうした時代的状況があるからこそ逆に、この講義では、 イスラームの教えが決して非合理的でも狂信的でも野蛮でもなく、むしろ十分に理解可能であり、そこには人類の大きな叡智がたたえられているという点に着目する。
    具体的には、 「言語」 「暮し」 「世界観」 「人間観」 「経済」 「法」 「宗教・信仰」 「グローバリゼーション」 「オリエンタリズム」 「思想」 「文学」 「中東和平」 「開発援助」 などの文化・社会に関するトピックをとりあげて、様々な角度からイスラームについて考察すると同時に、イスラームの教えから現代の日本や近代社会を捉えなおしてもみたい。アラブ・イスラーム世界との知的なコミュニケーションの意義、 重要性、あるいは相互理解の可能性をつかむ端緒になればとも考える。


2. 教材・参考文献

    講義内容の全体を包括したテクストはないので、講義を大切にしてほしい。
    参考文献については、適宜紹介する。


3. 授業計画

    第1回 「宗教とは何か」
    なぜ宗教なのか。そしてなぜイスラームなのか。講義の全体の紹介をしながら、この講義で扱う宗教の意味を明らかにしながら、文化や科学との関係を示し、アラブやイスラームについての問題意識も共有しておきたい。

    第2回 「アラビア語と日本語――遠くて近い二つの言語」
    アラビア語はたしかに日本人にとってなじみのない言葉だが、実は近い言葉と言えなくもない。二つの言語の異同を、言葉の仕組みと実際の使われ方の両面から考える。言葉からみた二つの社会・文化の比較。

    第3回 「オリエンタリズム――異文化理解の手がかりとして」
    日本あるいは西側の中東理解、イスラーム理解を極端に遠回りさせる原因の一つに「オリエンタリズム」の影響がある。「オリエタリズム」とは何か。異文化理解の端緒をつかむ。

    第4回 「日本人になぜイスラームが分らないのか」
    イスラームは日本人には非常に遠い宗教である。なぜ遠いのか、なぜ分らないのか。日本人にとっての宗教が何なのか、宗教とされるものと同様に向き合ってきたのかという観点から、日本人のイスラームアレルギーを考察する。

    第5回 「イスラームという宗教」
    イスラームとはそもそも何なのか。「13億人の宗教」「一神教の最終形態」「古くて新しい宗教」という3つの観点からイスラームを紹介する。「アッラーフ・アクバル」(神は偉大なり)とは何を意味するのか。アッラーとは、預言者とは、クルアーンとは・・・。また、ユダヤ教やキリスト教との関係、多神教の関係はいかなるものなのか。イスラームに関する初歩的な疑問に答える形で、この教えの基礎を紹介する。

    第6回 「人はなぜ断食するのか――イスラームの心」
    目に見えるものを信じるのは容易いが、目に見えないものを信じるのは難しい。しかし、目に見えないものが信じられなければたとえば友情も愛情も成り立たない。目に見えないものが信じられる思考回路が確立しているか否かが文化や社会の質を規定しているかのようでさえある。法的思考、神的思考も擁するイスラームの教えに見られる思考様式は、経験的思考に頼りすぎる現代社会への警鐘である。

    第7回 「アレッポ、オリーブ石鹸は語る」
    イスラーム教徒は、1年にひと月間(ラマダーン月)みなで斎戒を行う。この斎戒に限らず、多くの人々は日々の礼拝に勤しみ、ザカート(喜捨)を欠かさない。ジハードや親孝行もイスラームの大切な義務である。イスラームの教えがこのように人々の暮らしに根付いているのはなぜか。宗教の意味について考えたい。

    第8回 「SFC発文化交流プロジェクト」
    オリエンタリズムを超え、相互理解に資するには? 奥田研究会機屮妊献織・アラビック・ワールド・プロジェクト」が現地で制作したビデオ、「アハラン・ワ・サハラン・プロジェクト」の活動、SFCアラビヤ語の現地研修の様子などを紹介しながら、SFCから発信されている実践レベルの試みについて紹介する。(Θで行なう予定です。アレッポ大学日本センターより特別ゲストの出演も予定しています。)

    第9回 「アレッポ、オリーブ石鹸は語る」
    このごろ日本でも通販を中心に出まわるようになったアレッポの月桂樹石鹸(オリーブ石鹸の名称がつけられていることが多い)。実はこの黄土色の四角い塊には、自然と技術にかかわる人間の叡智が凝縮されている。スークの経済活動も含め、石鹸に語らせる職人、商人の心。

    第10回 「人間と動物の間――人間らしさについて」
    漱石の「我輩」にも「我儘な彼等」といわれる人間たち。人間らしさとはどういうことなのか、クルアーンの聖句も参照にしながら、人間と動物の違いを明らかにしていく。

    第11回 「経済技術援助について考える」
    日本による対シリアのODAは、ここ数年シリアに対する総援助額の7割程度で推移している。日本はシリアに限らず中東地域全体とっても援助大国である。しかし、額の大きさと効果の高さは必ずしも比例してはいないようだ。日本による経済技術援助、とりわけ文化無償の具体例を取り上げて、その問題点を考えてみたい。

    第12回 「中東和平と日本の中東外交」
    いわゆる中東の民主化は中東に平和をもたらすのか。パレスチナ、イラク、レバノンなどの事例から、中東における民主化と和平実現の可能性について考える。また、イラクの戦後復興に自衛隊派遣を延長するなどの日本政府の中東和平への取り組みについても紹介したい。

    第13回 「宗教と文化」
    文明圏としてのイスラーム、信仰の対象としてのイスラーム、万有にとっての教えとしてのイスラーム。冷戦終了後の世界において、また近代文明の終焉期(あえてそう呼んでおくのだが)において、イスラーム圏がわれわれの前に浮かび上がっている。宗教と文化のかかわりをまとめながら、グローバル化時代におかれたわれわれにとってのイスラームの意味を考える。

    第14回 「年に一度の雨を待つ――田舎と都市、人間と文明」(授業回数は増やしません)
    いわゆる肥沃な三日月地帯の中心に位置するアレッポは、その周辺を豊かな農業地帯に囲まれている。「年に一度の雨を待つ」小麦栽培を正業とするアレッポ南東部の村もそのひとつ。さて村の長老の語った彼らの暮らしとは?。都市や文明のあり方と宗教の関わりについても考える。

    第15回 「パラボラアンテナの花とクルアーンCD−ROM」(授業回数は増やしません)
    情報化社会の波は確実にシリアにも訪れている。パラボラアンテナをつければ、ヨーロッパ、アラブ、東南アジア、中国からの衛星放送を受信できる。また、クルアーンやスンナ(聖預言者ムハンマドの言行)のCD−ROMが安価で入手できる。インターネットカフェも急増している。他方、物質文明からの文化侵略の問題も深刻である。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    学期末の論述試験。13回の授業の内容が各人なりに理解されていることはもとより、論述の方法や表記の正しさも採点の際に考慮するので、日本語を書く技術もよく学んでおくこと。


5. 履修上の注意・その他

    講義時間中教室での飲食は禁止する。
    授業計画は、都合により順序を変更することがある。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2005-03-13 18:37:53


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