KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


言語とヒューマニティ (國枝 孝弘

    2006年度春学期 水曜日1時限
    科目コード: 20230 / 2単位
    カテゴリ: 11.汎用-共通基盤科目(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    この科目は、言語というパースペクティブから、哲学・歴史・文学・宗教・芸術といった人文科学諸分野を考察することを目的とする。声、歌、文字、テキストによる、話す、語る、書くといった人間の行為は、意図の伝達、共同性の構築、芸術作品の創造などの問題を考えるうえでその基盤となす。つまり言語を考えることは、その話し手である人間を考えることであり、人間と人間の絆を考えることである。グローバリゼーションが喧伝されるこの現代において、人間の起源が解き明かされようとしているこの現代において、「個」としての人間存在と「人間性(=ヒューマニティ)」との関係をどのように考えていけばよいのか、この問題を「言語」を支柱として探求していく。


2. 教材・参考文献

    参考文献は各回の授業計画を参照のこと。参考文献は授業の背景を説明するものであり、授業前に読むというよりも、授業後に考えを発展させるためのガイドという位置づけである。また授業開始時にも補足の参考文献表を配布する予定である。


3. 授業計画

    第1回 言語と人間
    ヒューマニティという言葉の定義、言語との関連性、授業の目的について解説する。
     参考文献
     丸山圭三郎『ソシュールの思想』(岩波書店)
     斧谷彌守一『言葉の二十世紀』(ちくま学芸文庫)
     ジョージ・スタイナー『脱領域の知性』

    第2回 声と人間
     ソシュール言語学に見られる「言語の恣意性」に対立する立場から、「音」としての言語の特性に着目し、人間にとって「声」とは何か、それは人間同士のどのようなつながりを可能にするものなのか、といった問題を考える。

     参考文献 
     川田順三『声』(ちくま学芸文庫)
     小沢昭一『ものがたり 芸能と社会』(白水社)
     兵藤裕己『<声>の国民国家・日本』(NHKブックス)
     工藤進『声』(白水社)

    第3回 文字と書くこと
    人間はなぜ書くということを始めたのか、また何を書き記すために、文字を用いたのか、そして私たちの日常の生活において、書くという行為はどのような重要性を持っているのか、といったことについて考える。

    参考文献
     白川静『回思九十年』(平凡社)
     ハヴロック『プラトン序説』(新書館)
     プラトン『パイドロス』(岩波文庫)
      藤枝晃『文字の文化史』(講談社学術文庫)

    第4回 名づけという行為
     「名づけ」という具体的行為を通して、言語と世界の係りを探るとともに、文字という形に結晶化する言語の創造性について考える。

     参考文献
     田中克彦『名前と人間』(岩波新書)
     丹生谷貴志他『現代哲学の冒険 物語』(岩波書店)
     オング『声の文化・文字の文化』(藤原書店)

    第5回 宗教と人間
     宗教とことばの関係は、次の2つの問題において顕著になる。ひとつは「表現できない至高体験」という言語化の否定。一方ことばによる世界の創造という、モノとことばとの一体性である。このふたつの問題に焦点をあて人間存在における宗教の位置付けについて考える。
     
     参考文献
     ブーバー『ハシディズム』(みすず書房)
     ジョルジュ・バタイユ『宗教の理論』(人文書院)
     ルドルフ・オットー『聖なるもの』(岩波文庫)
     田川健三『宗教とは何か?』(大和書房)理性的人間の解体?
     西谷修「<宗教>と近代 ― 世俗化のゆくえ」、『宗教への問い4 宗教と政治』(岩波書店)
     所収

    第6回 想像力と人間
     伝説や言い伝えなどの民衆的想像力を手がかりとして、人間の共同性とそれを支える言語表象について考える。特にこの回は「共同幻覚」の問題を扱う。

     参考文献
     岡田隆彦「生きる歓び」、『芸術の生活化』(小沢書店)所収
     川村二郎『銀河と地獄』(講談社)
     柳田国男『魂の行方』
    富士川義之『英国の世紀末』(新書館)

    第7回 象徴と照応
    「たとえる」「くらべる」など人間の類推能力から出発し、人間がいかにこの現実世界だけでなく、象徴の、フィクションとも呼べる世界に生きているかと考察する。
     参考文献
     カッシーラー『人間』(岩波文庫)
     ジルベール・デュラン『象徴の想像力』(せりか書房)
     シャルル・ボードレール「交感」、『悪の華』(新潮文庫)その他。


    第8回 記憶と人間
    記憶と想起による過去の再編成という立場から歴史叙述の問題を考える。特に物語と歴史の関係性について考察する。

     参考文献
     鵜飼哲『償いのアルケオロジー』(河出書房新社)
     野家啓一『物語の哲学』(岩波書店)
     香月洋一郎『記憶すること・記録すること』(山川出版社)

    第9回 中間レポートコメント
    中間レポートについて講評を加え、最終レポートの方針を説明する。

    第10回 個と近代、共同性と言語
    ことばと人間存在を、「個」をどのように表象するかという観点から考察する。具体的には近代合理主義における、個という単位、そこに内在する抽象性と普遍性という問題を取り上げる。

     参考文献
     ルナン『国民とは何か』(河出書房新社)
     フィンケルクロート『思考の敗北』(河出書房新社)
    西谷修『不死のワンダーランド』(講談社学術文庫)
     塚原史『人間はなぜ非人間的になれるのか』(ちくま新書)

    第11回 語りと共同性
     語りという場における他者との共有意識を出発点にして、語りがもたらす共同意識の発生が、文学と言う場でどのような作品世界を形成してきたか考察する。
    参考文献
    川村二郎『懐古のトポス』(講談社)
    ベンヤミン『物語作者』(ベンヤミンコレクション1、ちくま学芸文庫)
    吉本隆明『共同幻想論』(角川文庫)

    第12回 文化の差異と多様性
     19世紀末から20世紀初頭の西洋における芸術運動を例に取り、理性・主体から離れて、無意味・無意識・「非人間」(ギョーム・アポリネール)へと走ったアヴァンギャルド運動を追う。

     参考文献
     塚原史『記号と反抗』(人文書院)
     トリスタン・ツァラ『ダダ宣言』(竹内書店新社)
     田之倉稔『イタリアのアヴァンギャルド』

    第13回 詩と人間
     詩的言語というメッセージ性を離れた言語の特質と、詩的世界を生み出す人間の能力について考える。また、文学における伝承と独創性の問題を扱う。

      参考文献
     T・S・エリオット「伝統と個人の才能」、『文芸批評論』(岩波文庫)所収
     ウォルター・ベンヤミン「物語作者」、『ベンヤミンコレクション2エッセイの思想』(ちくま学 
     芸文庫) 所収
     西郷信綱『詩の発生』(未来社)


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    成績評価基準・提出課題
    成績は次の3つの課題を総合して評価する。
    1)授業感想レポート:10点
    出席の代わりになるものであるが、第1回の授業時に説明するフォーマットにのっとって提出されたもののみ評価の対象とする。
    2)中間レポート:40点
    3)最終レポート:50点

     


5. 履修上の注意・その他

    なし


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    初回出席者のみ履修を認める


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2006-03-13 15:03:03


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