KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


比較文化D (古石 篤子國枝 孝弘堀 茂樹

    2006年度秋学期 木曜日3時限
    科目コード: 20243 / 2単位
    カテゴリ: 11.汎用-共通基盤科目(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    この授業の目的は現代の欧州、とりわけフランスの実像を探り、 それを一種特異な拡大鏡として現代日本を、 あるいはより一般的に現代の世界を顧みることにある。
     従来、 わが国におけるフランスのイメージはきわめて偏ったステレオタイプの積み重ねにとどまっているが、 それでも近年、 2002年ワールド杯でのサッカー日本チーム監督トルシエ、 日産自動車社長ゴーンの登場によって、 そうしたステレオタイプに少し風穴が開いたかに見える。 この授業では、 その風穴を押し広げ、 日本人一般にとって合点しやすい鋳型にはおさまらぬ、 したがって 「違和感」 に満ちたフランスおよびフランス国民の姿を発見しようと試みる。 西欧の 「文明国」 を無批判に仰ぎ見る時代はとうに過ぎ去った。 しかしまた今日、 「もはや西欧から学ぶものはない!」 などと嘯 (うそぶ) くのも、 浅薄の誹りを免れない。異文化を理解するとは結局、 その異文化に接するときに自らが覚える違和感を知的に検証することと表裏一体なのだ。
     この授業はSFCフランス語研究室の専任教員2名が担当するが、2回程度、義塾他学部の教授による特別講義を挿入する予定である。具体的内容はシラバスを参照願いたいが、いずれにせよ、堀茂樹(フランスの思想&文学、現代フランス&EU論)は、フランスの地政学的条件や歴史的文脈を踏まえつつ、現代フランス及びヨーロッパ統合に関わる政治問題、社会問題を思想的観点から分析し、いくつかの争点を浮き彫りにしようと試みるにちがいない。一方、國枝孝弘(近代フランス文学、フランス語教育)は、専門の文学だけでなく、そこから越境して言語と記憶、アート、音楽、映画などに言及するだろう。両名が何らかの共通テーマを扱うかどうかは未定だが、とにかく一致協力し、全体として脈絡の明らかな講義をおこなうように努める。


2. 教材・参考文献

    ★詳しい参考文献は授業の際に配布する
    <第2回〜第5回分(國枝)>
    参考文献は各回の授業計画を参照のこと。
    <第6回〜第9回分(古石)>
    今井むつみ(2000):「サピア・ワーフ仮説再考−思考形成における言語の役割、その相対 性と普遍性−」『心理学研究』vol.71, No.4、pp.415-433.
    サピア、E. & ウォーフ、B.L.他(1995):『文化人類学と言語学』弘文堂.
    鈴木孝夫(1973):『ことばと文化』岩波新書.
    ピンカー、S.(1995):『言語を生み出す本能(上・下)』NHKブックス.
    山鳥 重(2002):『「わかる」とはどういうことか』ちくま新書.
              *
    中村桃子(2001):『ことばとジェンダー』けい草書房.
    藤田知子(2002):「言語のジェンダー―フランス語名詞の『性』とは何か」『三色旗』第7 月号、652号、pp.24-31.
    レイコフ、R.(1990):『言語と性−英語における女の地位』(新訂版)有信堂.
              *
    ジオルダン、H.(1987):『虐げられた言語の復権』批評社.
    田中克彦(1981):『ことばと国家』岩波新書.
    府川源一郎(1992):『消えた「最後の授業」』大修館書店.
    宮島 喬(1988):『現代ヨーロッパの地域と国家』有信堂.
              *
    古石篤子(1992):「ECの言語政策」 SFC Journal of Language and Communication, vol.1、 pp.19-31、言語コミュニケーション研究所、慶應大学.
    ----(1995):「外国語としての自国語の教育と普及−フランスにおける方策と事業」『日本 語学』vol.14、pp.61-73.
    西山教行(2000):「『植民地党』としてのアリアンス・フランセーズ−植民地主義における 言語普及」『新潟大学経済学年報』第24号、pp.163-184.
    三浦信孝(編)(1997):『多言語主義とは何か』藤原書店.

    <第10回〜第13回分(堀)>
    参考文献は授業時に指示します。


3. 授業計画

    第1回 イントロダクション
    授業全体の説明のあと、講師3人によるパネルディスカッション形式で、本講義において目指すことを浮き彫りにしたい。

    第2回 記憶と起源-19世紀フランス近代を考える(1)「近代と過去の想起」(國枝1回目)
    近代の定義は様々だが、ここではフランス革命以前と以後の断絶に注目し、その時代の文学の定義を考えながら、近代社会の形成が過去の想起とどのように結びついているのか、問題を概観する。
    <参考文献>
    福井憲彦編『フランス史』(山川出版社)特に第5章
    遅塚忠躬『フランス革命 歴史における劇薬』(岩波ジュニア新書)
    クシシトフ・ポミアン『ヨーロッパとは何か』(平凡社ライブラリー)
    工藤庸子『ヨーロッパ文明批判序説』(東京大学出版会)

    第3回 記憶と起源-19世紀フランス近代を考える(2)「伝統とモデルニテ」(國枝2回目)
    フランス革命以後の近代社会の成立に対して、文学者はどのような態度をとったのか、シャトーブリアンなどの文学者の態度を例にして、19世紀の文学者たちの同時代批判を考察する。
    <参考文献>
    ゴデショ『反革命』(みすず書房)
    石川美子『自伝の時間』(中央公論新社)
    阿部良雄『群集の中の芸術家』(中公文庫)

    第4回 記憶と起源-19世紀フランス近代を考える(3)「学問の誕生:言語学と歴史学」(國枝3回目)
    19世紀に成立することになる、言語学と歴史学という2つの学を起源を探究と過去の再構成という観点から考察する。
    <参考文献>
    風間喜代三『言語学の誕生』(岩波新書)
    風間喜代三『印欧語の故郷を探る』(岩波新書)
    モーリス・オランデール『エデンの園の言語』(法政大学出版局)
    ロジェ=ポル・ドロワ『虚無の信仰』(トランスビュー)
    ジュール・ミシュレ『民衆』(みすず書房)

    第5回 記憶と起源-19世紀フランス近代を考える(4)「意識の表象と<私>」(國枝4回目)
    20世紀初頭のフランスの大作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の抜粋を読みながら、意識と無意識、記憶の表象といった問題を考え、19世紀から20世紀への移り変わりを「私」をキーワードにして考える。
    <参考文献>
    マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(ちくま文庫)
    ロラン・バルト「人はつねに愛するものについて語りそこなう」『テクストの出口』(みすず書房)所収
    鈴木道彦『プルーストを読む』(集英社新書)

    第6回 「ことばと思考、そして文化」(古石)
    よく「ことばは透明なツールではない」と言われる。それは「ことばは思考様式を決定する」という意味であったり、「ことばは文化を反映する」という意味であったりする。だが本当にそうだろうか。またもしそうであるなら、いかにして、どの程度までこれらの命題は正しいのだろうか。「文化」を「比較」する際に、まず「ことば」というものの役割を明確に押さえておきたい。

    第7回 「ことばとジェンダー」(古石)
    生物学的な性(sex)と対比して、文化的・社会的につくられた性差を「ジェンダー」という。この回では、ことばの内部そのものに反映されている社会的・文化的性差の問題を、日本語・フランス語・英語を視野にいれて考察し、それを乗り越える視点を模索したい。

    第8回 「ことばと国家(1)」(古石)
    私たちには日本=日本語、フランス=フランス語という図式がないだろうか。2回続きで、「ことば」をめぐる問題にみられる日本とフランスの国家体質の類似点と相違点を探ってみたい。初回は国語の成立と少数言語(地域語・少数言語、移民の言語)について考察する。

    第9回 「ことばと国家(2)」(古石)
    前回に続き、両国の自国語普及政策について考察する。植民地と言語の問題にも触れようと思う。

    第10回 ナショナル・アイデンティティーとフランス国籍法―「フランス人」とは何か?―(堀)
    フランスの国籍法を正確に知ることに努めつつ、欧米各国や日本の国籍法にも言及し、国際的な比較をおこなう。国籍法はネーション概念の反映ではないが、それと無関係でもないと考える立場から、フランスにおけるナショナル・アイデンティティーの在り方を探ると同時に、近代的ネーションとはいかなるものであるのかを問い直す。

    第11回 「ライシテ」―フランス方式の「共生」―(堀)
    フランスの国立中・高等学校における宗教的シンボル(ex.「イスラム・スカーフ」)の顕示的着用を禁じる法律の制定をめぐる議論をとおして、フランス共和国における社会統合の鍵ともいえる「ライシテ」の原理を紹介し、その実態をも考察しながら、英米、日本における統合の方式と比較する。

    第12回 プロジェクトとしての欧州統合―ヨーロッパにおける普遍性と多様性の分節化―(堀)
    欧州憲法条約がフランスの国民投票で批准されなかったことは記憶に新しいが、それでも、典型的な国民国家フランスの将来が統合欧州にあることは間違いない。進化した近代のプロジェクトという観点から、来るべき「ヨーロッパ」の形を展望し、欧州市民権について考える。

    第13回 フランスにおける民主主義の行方―アクチュアリティを考察する―(堀)
    都市郊外に住む貧困層の若者の「暴動」(2005年秋)と、CPUという雇用契約の法制化に対する学生の反対運動(2006年春)は、フランス全体を揺るがし、社会の亀裂と政治の危機がかなり深刻なものであることを示した。しかし、それは一体どういう亀裂であり、危機であるのか? 何に起因するのか? 来る
    大統領選挙をも展望しつつ、フランスにおける民主主義の行方を考える。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    学期末筆記試験によって評価する。



5. 履修上の注意・その他

    この科目を履修するには、初回の授業に出席することが必須です。


6. 前提科目

    特になし


7. 履修条件

    初回の授業に出席した学生に選抜用紙を配布し、その用紙に、履修を希望する理由を記述するよう求める。履修者選抜は、その記述内容に基づいて行う。初回の授業に出席しなかった学生には履修許可を出さない。


8. 旧科目との関係

    「比較文化」「比較文化A」*いずれかの科目を進級、卒業あるいは修了に関わる科目の単位として、同一担当者にて修得済みの学生は自由科目としての履修のみ可能。


9. 授業URL


2006-09-08 23:26:49


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