KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


人間環境整合論 (福田 亮子

    2006年度春学期 金曜日1時限
    科目コード: 47280 / 2単位
    カテゴリ: 29.クラスター-環境情報系科目(学部)
    4.研究領域科目−環境情報系科目(大学院)


1. 主題と目標/授業の手法など

    われわれは日常生活の中で常にわれわれを取り囲むもの、すなわち環境と対峙している。環境からの働きかけは各種感覚器官に与えられ、人間の側から環境への働きかけは主に身体運動により行われる。これらの関係がスムーズに行くためには、環境が人間の感覚機能や身体機能に合った形で設計されている必要がある。したがって人間の感覚の生理的、 心理的性質や身体構造に関する理解を深めることは、人間にとって優しい環境を構成するうえで欠かせない、極めて重要な課題となる。
    このように人間と環境の整合を目指す学問分野は「人間工学」あるいは「エルゴノミクス」と呼ばれる。生体機能に関する生理的、 心理的知見、 身体構造に関するデータを実際の人間生活あるいはそれを可能にしている環境の設計に活かすためには、関連する生体機能の計測方法、 記述方法、 応用方法、 評価方法を学ぶ必要がある。本講義 「人間環境整合論」 ではさまざまな環境を対象に、人間工学的視点に立った環境設計を実例を通して学ぶ。
    授業はパワーポイントを用いた講義と演習から成る。毎回最後の20分程度を演習にあてる。授業の資料は毎回配布する。
    なお本講義は秋学期に開講している人間環境整合論(担当:福田忠彦)と並行開講のため、内容はほぼ同じである。両方を履修してもどちらか片方は自由科目の扱いとなり、取得できる単位は2単位のみであることに留意されたい。


2. 教材・参考文献

    教科書は用いない。参考文献としては例えば以下のような文献が挙げられるが、これ以外にもトピックに応じて講義内で随時紹介する。
    福田忠彦. 生体情報システム論. 東京, 産業図書, 1995, 242p. (ISBN 4-7828-5303-3)
    福田忠彦研究室(編). 人間工学ガイド. 東京, サイエンティスト社, 2004, 330p. (ISBN 4-86079-014-6)


3. 授業計画

    第1回 オリエンテーション (4月14日)
    本講義で扱う「人間工学」「エルゴノミクス」とは、人間と環境との関係をよりよくするための学問である。ここで言う環境とは人間を取り巻くものすべてであるため、人間工学の対象が非常に多岐にわたることは想像に難くないだろう。また、関連領域も心理学や生理学、医学はもちろんのこと社会学や経営学などと幅広く、非常に横断的な学問分野である。オリエンテーションでは人間工学とは何か、そしてその位置づけや基本的な考え方について述べる。
    ・人間工学とは何か
    ・人間と環境の相互作用
    ・本講義の内容

    第2回 身体機能の計測と記述 (4月21日)
    人間と環境の好ましい関係を築くためにはまず人間を理解することが必要である。これにあたっては、人間の身体特性や感覚の心理的・生理的側面を一定の方法で計測・記述する必要がある。そこで第2回・第3回の講義では人を測る方法を概説する。第2回では身体特性に焦点を当て、巻尺などを用いた伝統的な計測法から計算機を駆使した最新の計測技術までを紹介する。そして、人体計測・運動計測によって得られたデータがどのように人間の環境への働きかけの改善に応用されるかについても、実例を挙げながら解説する。
    ・人を測る方法
    ・人体計測法
    ・運動・動作・行動の計測法

    第3回 感覚・心理機能の計測と記述 (4月28日)
    環境から人間への働きかけにはいろいろな形があるが、そのほとんどの部分は人間の何らかの感覚器官を通して行われる。そして人間の行動のほとんどが外界から受容した情報を処理した結果に基づいて起こることから、人間の感覚機能の計測も人間と環境との整合を考える上で非常に重要である。ここでは特に視覚・聴覚機能についてその計測方法と計測データの応用方法を紹介する。また、近年人間工学の分野でも注目されている感情・情緒の計測や労働衛生の観点から非常に重要な疲労についても必要なデータを得る方法を紹介する。
    ・感覚機能の計測
    ・感情の計測
    ・疲労の計測

    第4回 人間と調和した環境設計の方法 (5月12日)
    人間と調和した環境設計を行う際、近年はより利用者の立場に立ち、設計段階から利用者も積極的に取り込むような「人間中心設計」の考え方が生かされるようになってきている。また、従来設計の根拠とされてきた人間の感覚機能、認知機能、身体機能に加え、感性・情緒という人間の高次の精神活動も考慮されるようになってきている。そこで、第2回および第3回で紹介した計測・記述方法により得られた人間のデータを環境設計に生かす方法を概説する。
    ・人間中心設計
    ・感性・情緒を考慮した設計の方法
    ・人間と調和した環境設計に関する規格・基準

    第5回 エルゴノミクス・フィールドワーク (5月13日:7月14日分の補講)
    SFCははたして人間工学的に設計されているか?授業の1時間半を使ってフィールドワークを行い、SFCをエルゴノミクス的視点から考察する。結果は時間の最後に提出する。

    第6回 文字・記号情報提示のエルゴノミクス (5月19日)
    外界の情報の80%は視覚器官を通して得られるため、視覚情報の設計は非常に重要な課題である。特に文字や記号などにより表される情報はわれわれの生活において重要である場合が多く、これにより人間の行動やそのパフォーマンスは大きく左右される。そこで、確実に情報を伝達するための文字・記号情報の提示について実例を挙げながら解説する。さらに、視覚に障害がある場合にその代行手段としての触覚による情報提示についても取り上げる。
    ・文字情報デザインのエルゴノミクス
    ・記号情報デザインのエルゴノミクス
    ・触知覚におけるエルゴノミクス

    第7回 日常物のエルゴノミクス (5月26日)
    日常の身近な環境から、文具や調理用具など比較的単純な機能を持つ道具ならびにパッケージを取り上げる。このような道具に関しては形が機能をわかりやすく表しているか、身体サイズ・身体機能にその道具が合っているかどうか、使うのに必要とされる力が適切か等を検討する必要がある。いくつかの実例を取り上げ、これらの製品をエルゴノミクス的に設計するための留意点について解説する。
    ・文具のエルゴノミクス
    ・その他の道具・モノのエルゴノミクス
    ・パッケージのエルゴノミクス

    第8回 家電のエルゴノミクス (6月2日)
    最近の家電製品は非常に多機能化しており、これを使いやすいものにするにあたっては、その家電製品が本来果たすべき機能と直結したハードウェアの特性(例えば掃除機であれば本体のノズル部分の持ちやすさや重さなど)のみならず、これを操作するためのハードウェアとソフトウェアについても充分な配慮が必要である。すなわち、製品の状態を示すディスプレイの見やすさやわかりやすさ、報知音の聞き取りやすさ、ボタンなどの操作のしやすさ、必要としている機能に到達するまでのプロセスと利用者の考えているプロセスの一致度などに配慮する必要がある。
    ・掃除機・洗濯機のエルゴノミクス
    ・調理家電のエルゴノミクス
    ・携帯電話のエルゴノミクス

    第9回 コンピュータ利用におけるエルゴノミクス (6月9日)
    情報通信技術(IT)が加速度的に社会に広まり、いまやコンピュータを使うことはほとんど当たり前のことになりつつある。しかし一見便利そうに見えるコンピュータも、実際には技術の進歩があまりにも速いために使いこなすことが難しい場合も多い。またコンピュータを使う時間の延長に伴い、目や身体に対する過度の負荷も大きな問題となっている。ソフトウェアとハードウェア、そしてこれを使う環境までを含めた「人にやさしい」IT環境の整備について考える。
    ・ソフトウェアのエルゴノミクス
    ・入力・出力機器のエルゴノミクス
    ・コンピュータを使った作業における留意点

    第10回 クルマのエルゴノミクス (6月16日)
    自動車の運転には常に変化する外界の状況を適切に把握し、それに対応して行動することが求められる。近年では運転者の負担を軽減するための技術が開発されているが、たとえばナビゲーションシステムはその複雑さゆえ運転者に余計な負担や過剰な情報を与えてしまう場合もある。ここでは運転時の身体的負担に直接関わるシートなどのインテリアから最新の運転アシスト技術が運転のパフォーマンスに与える影響までを人間工学的な視点から解説する。
    ・クルマのインテリアのエルゴノミクス
    ・運転アシスト技術と運転パフォーマンスの関係
    ・ドイツにおけるクルマのエルゴノミクス

    第11回 インテリアのエルゴノミクス (6月23日)
    建築設計において人間工学的な考え方を取り入れる場合、建物各部の寸法を人間の身体機能に合わせ物理的に快適にすることはもちろん重要であるが、これに加え心理的にも居心地が良いと感じられる空間を作り出すということもまた重要である。そのために大きな役割を果たすのが色彩設計や照明である。ここでは特に感性・情緒に訴えかける色彩設計・照明設計の条件について整理する。
    ・色彩設計におけるエルゴノミクス
    ・照明設計におけるエルゴノミクス

    第12回 チームワークにおけるエルゴノミクス(6月30日)
    これまでに取り上げてきたエルゴノミクスの事例はそのほとんどが個々の人間(ユーザ)を扱ったものであった。しかし、大規模プラントなど複数の人間が1つのチームを形成して行う作業においても、エルゴノミクス的視点は重要な役割を果たす。そこで、原子力発電所、医療現場、航空というリスクの高い3つの場におけるチームワークを扱ったGIHRE(Group Interaction in High Risk Environment)プロジェクトで行われてきた研究の成果を中心に、チームワークにおけるエルゴノミクスについて解説する。
    ・原子力発電所の運転におけるエルゴノミクス
    ・医療現場におけるエルゴノミクス
    ・航空におけるエルゴノミクス

    第13回 エルゴノミクスにおける現状と今後の展望 (7月7日)
    「エルゴノミクス」「人間工学」という言葉を街中で見ることも今日では珍しくなくなりつつあるが、技術革新が続く現代社会において、エルゴノミクスの果たす役割は今後ますます大きくなっていくものと考えられる。本講義の締めくくりとしてエルゴノミクスの現状と今後の展望についてまとめる。
    ・エルゴノミクスにおける現状
    ・国際化を視野に入れたエルゴノミクスとユニバーサルデザイン
    ・エルゴノミクスの展望


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    本講義では毎回15〜20分程度を演習問題にあて、その解答の提出をもって出席とみなす。演習問題の提出は講義時間中に教室でのみ受け付ける。
    成績は13回分の出席点ならびに7月7日に提出する最終レポートを考慮して評価する。期末試験は行わない。


5. 履修上の注意・その他

    履修者数が400名を超えた場合には第1回の講義時に提出された演習問題に対する解答をもとに選抜を行う。したがって、履修を希望する場合には必ず第1回の講義に出席のこと。
    また、担当者の7月10日〜14日に開催される国際学会での発表に伴う出張のため、5月13日(土)に補講を行い、最終回の授業は7月7日(金)とする。この点を承知の上履修されたい。


6. 前提科目

    履修の前提としないが、「感覚の生理と心理」と関係が深い


7. 履修条件

    初回講義に課題を与え(授業時間内に回収)、その解答により選抜を行う。


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2006-03-13 20:49:03


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