KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


現代と社会システム (井庭 崇

    2006年度春学期 火曜日3時限
    科目コード: 26020 / 2単位
    カテゴリ: 16.汎用-複合系科目(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    本講義の目的は、社会を「システム」として捉える視点を身につけることです。取り上げるのは、最新の「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。この理論によれば、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことによって成り立っており、その結果として動的な秩序が形成されていると捉えられます。

    この捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができます。さらに、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しています。

    このように、社会システム理論は総合政策学的な/超領域的なアプローチの新しい基礎論といえるでしょう。授業では、このほかにもF・A・ハイエクの自生的秩序論や、J・A・シュンペーターのイノベーション論、A・ハーシュマンの社会変革論なども取り上げていきます。本講義で社会を捉える「新しい視点」を身につけ、自分たちの未来をつくることにつなげていってほしいと思います。


2. 教材・参考文献

    【教科書】
    ●『ルーマン理論の可能性』(村中知子, 恒星社厚生閣, 1996, ISBN:4769908164)

    【参考文献】
    ●『社会システム理論(上)』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1993, ISBN:4769907427)
    ●『社会システム理論(下)』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1993, ISBN:4769908083)
    ●『社会の経済』(ルーマン, 文真堂, 1991, ISBN:4830940395)
    ●『社会の法 <1>』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2003, ISBN:458800767X)
    ●『社会の法 <2>』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2003, ISBN:4588007688)
    ●『社会の芸術』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2004, ISBN:4588008005)
    ●『社会の教育システム』(ニクラス・ルーマン, 東京大学出版会, 2004, ISBN:413010098X)
    ●『マスメディアのリアリティ』(ニクラス・ルーマン, 木鐸社, 2005, ISBN:483322366X)
    ●『近代の観察』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2003, ISBN:4588007661)
    ●『信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム』(ニクラス・ルーマン, 勁草書房, 1990, ISBN:4326651202)
    ●『情熱としての愛:親密さのコード化』(ニクラス・ルーマン, 木鐸社, 2005, ISBN:4833223635)
    ●『宗教社会学:宗教の機能』(ニクラス・ルーマン, 新版, 新泉社, 1999, ISBN: 4787798049)
    ●『批判理論と社会システム理論:ハーバーマス=ルーマン論争』(J.ハーバーマス, N.ルーマン, 木鐸社, 1984, ISBN:4833202042)
    ●『ルーマン 社会システム理論』(ゲオルク・クニール, アルミン・ナセヒ, 新泉社, 1995, ISBN:4787795236)
    ●『貨幣論のルーマン:社会の経済講義』(春日淳一, 勁草書房, 2003, ISBN:4326652799)


3. 授業計画

    第1回 イントロダクション
    この授業の目標と全体像、進め方などを説明します。

    第2回 社会システム理論の位置と特徴
    「社会」が成り立っているというのはどういうことでしょうか? この問いは古くから考えられてきたものですが、私たちはいまだに納得のいく答えを手にしていません。現在、この問題を考えるための糸口として注目されているのが、社会学者ニクラス・ルーマンの理論です。ルーマンは、ウェーバーやパーソンズの問題意識とアプローチを踏まえつつ、さらにシステム理論の新しい成果を取り入れて、社会システム理論を構築しました。授業では、ルーマンの社会システム理論が、社会学やシステム理論の中でどのような位置にあり、どのような特徴をもっているのかを解説します。

    第3回 コミュニケーションとメディア
    私たちは日々ざまざまなコミュニケーションを行なっていますが、コミュニケーションというものは本来、成立が困難なものです。なぜなら、コミュニケーションの成立には、いろいろな不確実性がつきまとっているからです。このような不確実性を確実性へと変換することが「メディア」のもつ役割です。授業では、コミュニケーションの本質について考え、コミュニケーションの不確実性とそれを支えるメディアの種類について取り上げます。

    第4回 オートポイエーシスのシステム理論
    社会システム理論では、社会の構成要素は「コミュニケーション」であるといいます。先行するコミュニケーションが次のコミュニケーションを生み出し、さらに次のコミュニケーションへと接続していきます。社会とは、このようなコミュニケーションの連鎖による「オートポイエーシス」(自己創出)のシステムになっているというわけです。授業では、「オートポイエティック・システム」とはどのようなシステムなのかを解説します。

    第5回 経済システム
    経済の機能を社会システム理論の観点で捉え直します。経済システムでは、「支払い」という経済的コミュニケーションが絶えず生み出され、連鎖していると捉えることができます。この経済的コミュニケーションを支えるコミュニケーション・メディアが貨幣です。このような捉え方で、経済学の従来の概念である価格、市場、希少性、貨幣、欲求などを解釈し直します。また、意思決定や制御の問題についても考えます。

    第6回 法システム/政治システム
    法の機能と歴史的変化を社会システム理論の観点で捉え直します。法システムでは、「合法か不法か」という法的コミュニケーションが生み出され連鎖していきます。このような捉え方で、法の機能や「正義」、「裁判」などの概念を捉え直します。また、法システムと経済システムを結びつける「所有権」や「契約」、法システムと政治システムを結びつける「憲法」や「国家」についても、歴史的な観点で考察します。

    第7回 マスメディアとコミュニケーション
    マスメディアの機能を社会システム理論の観点で捉え直します。ここでいうマスメディアとは、複製手段を用いてコミュニケーションを伝播する社会装置のことです。新聞や本、雑誌のほかに、電子データも含まれます。マスメディアに情報として取り上げられるのには、「ニュース」か「広告」、「娯楽」という3つの基準があります。これのいずれかに該当する場合には、マスメディアによってコミュニケーションの連鎖が引き起こされる可能性があります。このような捉え方で、現代社会におけるマスメディアのリアリティに迫っていきます。

    第8回 ゲストスピーカーによる講演
    授業内容に関連するゲストスピーカー講演を予定しています。

    第9回 芸術システム
    芸術の機能と歴史的変化を社会システム理論の観点で捉え直します。芸術は、「芸術によるコミュニケーション」や「芸術についてのコミュニケーション」からなるシステムです。芸術作品は、コミュニケーションの手段として制作されます。造形芸術においては素材を用い、舞踏においては身体を用い、詩においては言葉を用いるわけです。しかし、それが芸術であるのは、物としての性質ではなく、芸術のコミュニケーションとしての性質によるものです。授業では、芸術の機能の特徴と、その歴史的進化についてお話しします。

    第10回 愛とコミュニケーション
    愛についての歴史的変化を社会システム理論の観点で考えます。近代社会は個人化の時代だといわれますが、単に分断されるだけでなく、ごく少数の人との「親密な関係」を育み深化させる可能性ももつことになりました。印刷技術の発明によって小説が普及し、それを通じて人びとの愛についての観念や感情は進化し、友愛とは異なる異性愛を方向づけることになったのです。情熱としての愛への歴史的変遷に、社会分化理論、コミュニケーション・メディア理論、および進化理論を駆使してアプローチします。

    第11回 宗教システム/科学システム
    宗教の機能を社会システム理論の観点で捉え直します。機能的にみるならば、宗教も他のシステムを決定する優位性を持ってはおらず、ひとつの社会現象として捉えることができます。また、授業では、学問の機能も社会システム理論の観点で捉え直していきます。学問では、「真」か「真でない」かの区別が問題となり、それをめぐってコミュニケーションが展開されます。いずれも印刷術の発明によって大きな影響を受けたという点について、取り上げます。

    第12回 教育システム
    教育の機能を社会システム理論の観点で捉え直します。歴史的にみると、以前は「こども」は、まだ小さく成熟していない人間だと見なされていたので、教育はこどもの成長を導き、堕落を防止しなければならないということになっていました。しかし、現在では、こどもの理解を考慮し、子どもに適した教育を導き出すということが考えられるようになってきました。授業では、教師と学生の相互のコミュニケーションによって生成される教育について考えます。

    第13回 総括
    これまでの授業を振り返って総括を行います。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    成績評価は、毎回提出してもらう宿題や、授業中のミニテスト、最終レポート等から総合的に評価します。


5. 履修上の注意・その他

    毎回宿題が出ます。また、授業は毎回の積み重ねで進行していくので、欠席しないようにしてください。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    初回授業中に履修希望理由を書いてもらい選抜を行ないます。


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2006-03-19 22:43:18


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