KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


地域と社会(米州) (山本 純一

    2007年度秋学期 火曜日4時限
    科目コード: 32150 / 2単位
    カテゴリ: 16.先端導入科目-総合政策-国際戦略(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

     南北アメリカ大陸は広大で、多様性に富む地域である。北はアングロアメリカ、南はラテンアメリカ、さらに後者は、先住民との混血が進んだ地域(インディオ的ラテンアメリカ)、先住民を排除した地域(ヨーロッパ的ラテンアメリカ)、先住民を抹殺し、アフリカからの奴隷とヨーロッパが混淆した地域(カリブ海地域)に分けることができる。だが、近年はグローバリゼーションの進展にともなって、地域統合や移民による接触・交流・摩擦が高まっている。そこで本科目では、グローバル化時代の均質化や格差化によってもたらされている当該地域社会の問題や矛盾そして未来への可能性を、映像および担当者の体験を交えて紹介、議論する。

     具体的なスケジュールは授業計画に示すが、以下の6つのパートに分ける。
    1) グローバリゼーションとアメリカ大陸
    2) 米国論
    3) インディオ世界から見たグローバリゼーション
    4) カリブ地域の思想と実践
    5) 南米と日本
    6) 学生による書評・映画評のプレゼンテーション

     課題は、1)毎回の講義に対する質問・感想・コメント(800字〜1200字程度。次回の講義の前々日までにWEB上で提出)、2)本科目と関連する文献または映像いずれかに関する書評または映画評1本(枚数自由)、3)授業評価・改善案。なお、書評(映画評)は(読書)感想文や要約ではない。取り上げた文献や映画を自分の視点から批評、評価しなければならない。


2. 教材・参考文献

     必読文献は、西川長夫(2001)『増補 国境の越え方――国民国家論序説』平凡社ライブラリー、山本純一(2004)『メキシコから世界が見える』集英社新書、野村亨・山本純一編(2006)『グローバル・ナショナル・ローカルの現在』慶應義塾大学出版会、「山本純一の視点」(http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/viewpoint/)である。

     各回の参考文献については、授業計画を参照。また、講義資料は授業前日までにグローバルキャンパス(http://gc.sfc.keio.ac.jp)もしくは山本純一研究会HP(http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/)の担当科目のサイトにアップしておく予定なので、こちらから入手すること。原則として授業では配布しない。


3. 授業計画

    第1回 (10月2日) オリエンテーション、グローバリゼーションとは
    授業の進め方をオリエンテーションしたのち、本科目のキーワードであるグローバリゼーションについて議論する。
    参考文献:
    西川長夫『増補 国境の越え方――国民国家論序説』平凡社、2001年
    A・アパデュライ(門田健一訳)『さまよえる近代―グローバル化の文化研究』平凡社、2004年
    E・W・サイード(大橋洋一訳)『文化と帝国主義2』みすず書房、2001年
    J・トムリンソン(片岡信訳)『グローバリゼーション―文化帝国主義を超えて』青土社、2000年
    ―――(片岡信訳)『文化帝国主義』青土社、1997年
    G・リッツァ(正岡寛司訳)『マクドナルド化する社会』早稲田大学出部、1999年
    ―――『マクドナルド化の世界―そのテーマは何か?』早稲田大学出版部、2001年
    S・ハンチントン(坪郷實他訳)『第三の波―20世紀後半の民主化』三嶺書房、1995年
    梶田孝道(編)『第2版国際社会学―国家を超える現象をどうとらえるか』名古屋大学出版会、1996年
    R・ロバートソン(阿部美哉訳)『グローバリゼーション―地球文化の社会理論』東京大学出版会、1997年
    S・サッセン(伊豫谷登士翁訳)『グローバリゼーションの時代―国家主権のゆくえ』平凡社、1999年

    第2回 (10月9日)アメリカ大陸にとってのグローバリゼーション
    アメリカ大陸にとってグローバリゼーションの始めが西洋文明による野蛮の発見=征服にあったこと、そしてこれによって世界はまさに球として「閉じた」ことを論ずる。
    参考映像と参考文献:「新大陸征服の野望」
    西川長夫(編)『ラテンアメリカからの問いかけ―ラス・カサス、植民地支配からグローバリゼーションまで』人文書院、2000年
    E・オゴルマン(青木芳夫訳)『アメリカは発明された―イメージとしての1492年』日本経済評論社、1999年
    E・ガレアーノ(大久保光夫訳)『収奪された大地―ラテンアメリカ500年』藤原書店、1991年
    トドロフ、ツヴェタン(1986)『他者の記号学――アメリカ大陸の征服』(及川・大谷・菊地訳)法政大学出版局
    A・G・フランク(山下範久訳)『リオリエント―アジア時代のグローバル・エコノミー』藤原書店、2000年

    第3回 (10月16日)「帝国」としてのアメリカ
    現在のアメリカ合衆国は「帝国」として語られることが多い。その「帝国」とは何か? 
    近現代史からアメリカ帝国主義を考える。
     参考文献:
     生井英孝『興亡の世界史第19巻 空の帝国 アメリカの20世紀』講談社、2006年
     ヴァラダン『自由の帝国―アメリカン・システムの世紀』(伊藤剛ほか訳)NTT出版、2000年
    小倉英敬『侵略のアメリカ合州国史―<帝国>の内と外』新泉社、2005年
     高橋章『アメリカ帝国主義成立史の研究』名古屋大学出版会、1999年
     ネグリ&ハート『<帝国>―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』
    (水嶋一憲ほか訳)以文社、2003年
     パニッチ&ギンディン『アメリカ帝国主義とはなにか』(渡辺雅男訳)こぶし書房、2004年
    山本吉宣『「帝国」の国際政治学―冷戦後の国際システムとアメリカ』東信堂、2006年

    第4回 (10月23日)アメリカニズム
    アメリカ合衆国の国民国家としての特質を、同じ共和国のフランスと比較して論ずる。
     参考文献:
     アレント『革命について』(志水速雄訳)ちくま学芸文庫、1995年
    シュレージンガーJr.『アメリカの分裂』(都留重人監訳)岩波書店、1992年
     トクヴィル『アメリカのデモクラシー第一巻(上)(下)』(松本礼二訳)岩波文庫、2005年
    ドブレ『娘と話す 国家のしくみってなに?』(藤田真利子訳)現代企画室、2002年
     ハンチントン『分断されるアメリカ』(鈴木主税訳)集英社、2004年
    古矢旬『アメリカニズム―「普遍国家」のナショナリズム』東京大学出版会、2002年
     大津留(北川)智恵子・大芝亮編著『アメリカのナショナリズムと市民像―グローバル時代の視点から』ミネルヴァ書房、2003年

    第5回 (10月30日)米国のラティーノ:「ラティーノ」は人種か?「ラティーノ」を足がかりに米国の人種問題を考える
    特別講師:桑野真紀(一橋大学大学院)

    1992年にロス・アンゼルスで起きた史上最悪と言われた人種暴動−その逮捕者の半数は、ラティーノと呼ばれるラテンアメリカ系移民であった。にも関わらず、いまだにこの人種暴動は「黒人対白人」もしくは「黒人対韓国系」の事件として位置づけられ、ラティーノたちの存在は歴史のページに登場してこない。ここから見えてくるものは何か? 授業ではラティーノ、特にラティーノとロス・アンゼルス暴動との関係を足がかりに、米国の人種問題について一考と加える。
    参考文献:
    桑野真紀「コミュニティを基軸にしたチカーノ・ナショナリズムの構築」野村・山本編(2006)所収
    Anzaldúa, Gloria, Borderlands/La Frontera: The new mestiza, 2nd ed., Aunt Lute Books, San Francisco, 1999.
    Rodolfo Acuña, Occupied America: A history of Chicanos, Longman Pub Group, 2006
    Romero, Mary et al., Challenging Fronteras: Structuring Latina and Latino lives in the U.S., Routlege, New York, 1997.
    Shorris, Earl, Latinos: A biography of the people, Norton, 2001.

    第6回 (11月6日)インディオからの異議申し立て:サパティスモの可能性と課題
     新自由主義(市場原理主義)的グローバリゼーションに反対し、先住民の権利と文化の擁護、自由・民主主義・正義を求めて武装蜂起したサパティスタ国民解放軍の理念と活動を最新のフィールドワークを交えて検証する。
    参考映像と参考文献:「Zapatista」「メキシコのゲリラ」
    山本純一『インターネットを武器にした<ゲリラ>――メキシコ・サパティスタ国民解放軍の闘争と言説に関する一研究』慶應義塾大学出版会、2002年
    山本純一『メキシコから世界が見える』集英社新書、2004年
    山本純一「サパティスタの挑戦――反グローバリズム・新ナショナリズム・脱国家ローカリズム」『ラテンアメリカ・レポート』2003年第20巻第2号、アジア経済研究所
    山本純一「社会運動とインターネット――サパティスタ運動に関する論争をめぐって」梅垣理郎編『総合政策学の最先端 第郡』慶應義塾大学出版会、2003年
    山本純一「<帝国>に抗するサパティスタ――マルチチュードの可能性」『神奈川大学評論』第45号、2003年7月
    「山本純一の視点」(http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/viewpoint/)
    崎山政毅『サバルタンと歴史』青土社、2001年
     サパティスタ民族解放軍(太田昌国・小林致広編訳)『もう、たくさんだ!――メキシコ先住民
    蜂起の記録1』現代企画室、1995年
    G.ロビラ著・柴田修子訳『メキシコ先住民女性の夜明け』日本経済評論社、2005年
    マルコス/イボン・ル・ボ著・佐々木真一訳『サパティスタの夢』現代企画室、2005年

    第7回 (11月27日)反WTO運動としてのフェアトレード
    「北」の需要に応じて、「南」が生産し(生産させられ)、その貿易・流通過程における収益の多くが「北」によって収奪されるという意味で、「南北問題」を典型的に表すコーヒーという商品作物を取り上げ、WTO流の「自由」貿易ではなく、「北」の消費国が「南」の生産者の生産コスト・労働対価に見合った「公正」な価格で買い取るというフェアトレードの可能性と課題について論ずる。
    参考映像と参考文献:「コーヒーの秘密」アジア太平洋資料センター(PARC)
    池上甲一「拡大するフェアトレードは農産物貿易を変えるか――その意義とパースペクティブ」『農業と経済』2004年4月号、6−17頁。
    臼井隆一郎『コーヒーが廻り 世界史が廻る』中公新書,1992年
    オックスファム・インターナショナル『コーヒー危機――作られる貧困』(日本フェアトレード委員会
    訳・村田武監訳)筑波書房、2003年
    辻村英之『コーヒーと南北問題――「キリマンジャロ」のフードシステム』日本経済評論社、2004年
    ブラウン、マイケル・バラット(青山薫、市橋秀夫訳)『フェアトレード―−公正なる貿易を求めて』
    新評論、1998年
    ペンダーグラスト、マーク(樋口幸子訳)『コーヒーの歴史』河出書房新社、2002年
    山本純一『メキシコから世界が見える』集英社新書、2004年
      山本純一「コーヒーのフェアトレードの可能性と課題――メキシコ・チアパス州の2つの生産者協同組合を事例として」野村・山本編(2006)所収

    第8回 (12月1日)(補講)若きゲバラが見た南米
    ロバート・レッドフォードがプロデュースした映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』を題材に、ブエノスアイレス大学の医学生であったエルネスト・チェ・ゲバラが見た南米の、今も変わらぬ現実とその後変化した現実を読み解く。
    参考映像と参考文献:『モーターサイクル・ダイアリーズ』
    エルネスト・チェ・ゲバラ『モーターサイクル・ダイアリーズ』(棚橋加奈江訳)角川文庫、2004年
    エルネスト・チェ・ゲバラ『ゲバラ日記』(高橋正訳)角川文庫、1999年
    戸井十月『チェ・ゲバラの遥かな旅』集英社、2004年
    三好徹『チェ・ゲバラ伝』原書房、2001年

    第9回 (12月4日)キューバ映画『苺とチョコレート』にみる共産主義対自由主義
     『苺とチョコレート』を題材に、自由主義(資本主義)が「勝利」したとされる時代状況にあっても社会主義を守るキューバと社会主義そのものの可能性と課題を考える。そして、新自由主義の名の下に福祉国家が退場し、人びとが「個化」する時代にあって、人と(地域)社会と国家の望ましい関係について構想する。
    参考映像と参考文献:『苺とチョコレート』
    伊藤誠『現代の社会主義』講談社学術文庫、1992年
    伊藤誠『現代の資本主義』講談社学術文庫、1994年
    西谷修『世界史の臨界』岩波書店、2000年
    ウォーラーステイン『アフター・リベラリズム――近代世界システムを支えたイデオロギーの終焉』藤原書店、2000年
    F・フクヤマ『歴史の終わり(上)(下)』(渡辺昇一訳)三笠書房、1992年
    山本純一「連帯経済の構築と共同体の構造転換――メキシコ最貧困州チアパスの経験から」
    内橋克人・佐野誠編『ラテン・アメリカは警告する――「構造改革」日本の未来』新評論、2005年
     山本純一「連帯経済――人間中心の経済の再生をめざして」アジア太平洋資料センター『月刊オルタ』2006年2月号

    第10回 (12月11日)アルゼンチンの市民社会と市民運動
    特別講師:廣田拓(慶應義塾大学非常勤講師)

    アルゼンチンにおいて、1990年代より顕著にみられる市民の社会的抗議運動は、何を意味するのだろうか? この問いを切り口に近年のアルゼンチンで行われている社会的実践や集合行為の諸事例より、社会的抗議や異議申し立てが民主主義の質に果たす役割を考察する。
    参考文献:篠原一『市民の政治学』岩波書店、2004年
    廣瀬純『闘争の最小回路』人文書院、2006年
    松下洋・乗浩子・編『ラテンアメリカ 政治と社会』新評論、2004年
    山口定・佐藤春吉・編『新しい公共性』有斐閣、2003年

    第11回 (12月18日)ラテンアメリカへの日系移民:ペルーを中心にして
    戦前、国策としての「口減らし」のため、南米への日系移民がたどった苦難の道、移民先社会での差別、そして日系移民社会内部における差別・対立の諸相を点描したのち、この「棄民」政策は戦後の高度成長時代にも続けられ、まさに「夢」の約束手形を切った日本政府(国家)に現在も責任があることを明らかにする。
    参考映像と参考文献:NTV(1997)「出稼ぎ」
    伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』有信堂、2001年
    大串和雄「フジモリ問題をめぐる10の疑問」『日刊ベリタ』、2002年
    遅野井茂雄『現代ペルーとフジモリ政権』アジア経済研究所、1995年
    小林忠太郎『ドミニカ移住の国家犯罪――移民という名の偽装「海外派兵」』八月書館、2004年
    萱野稔人『国家とはなにか』以文社、2005年
    村上勇介『フジモリ時代のペルー――救世主を求める人々、制度化しない政治』平凡社、2004年
    増田義郎・柳田利夫『ペルー 太平洋とアンデスの国――近代史と日系社会』中央公論新社、1999年
    柳田利夫編著『リマの日系人――ペルーにおける日系社会の多角的分析』明石書店、1997年
    柳田利夫編『ラテンアメリカの日系人――国家とエスニシティ』慶應義塾大学出版会、2002年
    山脇千賀子「人の移動・国家・生活の論理」清水透編著『ラテンアメリカ――統合圧力と拡散のエネルギー』大月書店、1999年
    若槻泰雄『外務省が消した日本人――南米移民の半世紀』毎日新聞社、2001年

    第12回 (1月8日)移民からデカセギへ:在日ペルー人との身近な共生を考える
     現在、日本にはラテンアメリカから「デカセギ」として働きに来ている人がおり、中には永住を決意している家族もいる。しかし、日本社会との軋轢は少なくなく、在日・沖縄・アイヌ等の問題も含め、日本が21世紀の国際化そして共生の時代にふさわしい社会かがどうかが問われている。
    参考文献:
    渕上英二『日系人証明』新評論、1995年
    花崎皋平『増補 アイデンティティと共生の哲学』平凡社、2001年
    伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』有信堂、2001年
    Alvaro Del Castillo, Los Peruanos en Japón, 現代企画室、1999年

    第13回 (1月15日)優秀書評・映画評のプレゼンテーションと講評(授業評価・改善案の提出締切日)
    優秀と認められた書評もしくは映画評を提出した学生諸君に10分程度のプレゼンテーションをお願いします。担当者からは全体および優秀作品についての講評をします。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    毎回のコメント・感想・質問(50%)、書評または映画評(40%)、出席点(10%)、授業評価・改善案(プラスアルファ点)。試験は実施しない。


5. 履修上の注意・その他

    本講義の履修を考えている学生はあらかじめ、山本純一(2004)『メキシコから世界が見える』(集英社新書)を読んでおくことが望ましい。また、スペイン語や山本が担当する「開発とローカリズム」の受講を考えている学生には本科目の履修を強く勧める。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    「リージョナルアナトミー論D」「リージョナルアナトミー論E」*これらの科目を進級、卒業あるいは修了に関わる科目の単位として修得済みの学生は、自由科目としての履修のみ可能。


9. 授業URL


2007-08-03 15:36:31.960932


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