KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


地域と文化(欧州・CIS) (古石 篤子國枝 孝弘堀 茂樹

    2007年度春学期 木曜日3時限
    科目コード: 32170 / 2単位
    カテゴリ: 16.先端導入科目-総合政策-国際戦略(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

     この授業の目的は現代の欧州、とりわけフランスの実像を探り、 それを一種特異な拡大鏡として現代日本を、 あるいはより一般的に現代の世界を顧みることにある。
     従来、 わが国におけるフランスのイメージはきわめて偏ったステレオタイプの積み重ねにとどまっているが、 この授業では、日本人一般にとって合点しやすい鋳型にはおさまらぬ、 したがって 「違和感」 に満ちたフランスおよびフランス国民の姿を発見しようと試みる。 西欧の 「文明国」 を無批判に仰ぎ見る時代はとうに過ぎ去った。 しかしまた今日、 「もはや西欧から学ぶものはない!」 などと嘯 (うそぶ) くのも、 浅薄の誹りを免れない。異文化を理解するとは結局、 その異文化に接するときに自らが覚える違和感を知的に検証することと表裏一体なのだ。
     この授業はSFCフランス語教室の専任教員3名が担当し、堀、國枝、古石の順番でオムニバス形式でおこなう。詳細は授業計画を参照されたいが、いずれにせよ堀茂樹(フランスの思想&文学、現代フランス&EU論)は、フランスの地政学的条件や歴史的文脈を踏まえつつ、現代フランス及びヨーロッパ統合に関わる政治問題、社会問題を思想的観点から分析し、いくつかの争点を浮き彫りにする。また、國枝孝弘(近代フランス文学、フランス語教育)は、専門の文学だけでなく、そこから越境して言語と記憶、アート、音楽、映画などに言及する。古石篤子(フランス語学、フランス語教育、言語教育政策)は言語を軸として欧州およびフランスの実情に迫る。


2. 教材・参考文献

    各教員の最初の授業の際に教室で配布する。


3. 授業計画

    第1回 イントロダクション
     授業全体の説明のあと、講師3人によるパネルディスカッション形式で、本講義において目指すことを浮き彫りにしたい。

    第2回 フランス人とは何か?――国籍法とナショナル・アイデンティティー(堀1)
     「フランス人」なるものの法的アイデンティティの基礎となる国籍法を、(日本を含む)各国のそれと比較対照しつつ、歴史的・地政学的なパースペクティブの中で紹介する。その上で、短絡的結論に走ることを避けつつ、フランス人におけるナショナル・アイデンティティの在り方を探る。人権思想を支える「普遍的人間」という「フランス的な」理念との関係にも言及し、各国の「国民意識」なるものを再考する。

    第3回 ネーションとは何か?――近代的ネーションの理念と愛国主義(堀1)
     典型的な近代国民国家と目されるフランスにおいて「ネーションとは何か」という問題を考察する。ここで紹介するD・シュナペールのネーション論は、アンダーソンのネーション論に決定的に影響されている日本の国民国家観に一石を投じるだろう。また、大革命以降のフランスで、二つの異なる愛国主義が真っ向から対立してきたありさまに言及し、わが国での愛国心をめぐる論議を考えるための補助線を提供したい。

    第4回 ライシテとは何か?――<共和国>流「共生」の方式(堀3)
     フランスの共和国原理は、近年日本でも多少知られるようになってきたが、やや「教条的に」理解された上で、礼賛されたり敵視されたりしている気味がある。ここでは、フランスの国立中・高等学校における宗教的シンボルの顕示的着用を禁じる法律の制定に言及して、フランス共和国における社会統合の鍵ともいえる「ライシテ」の原則を、それをめぐる論議とともに紹介する。当然ながら、英米、日本における社会統合の方式と比較する。

    第5回 「ヨーロッパ」とは何か?――プロジェクトとしての欧州統合(堀4)
     欧州憲法条約がフランスの国民投票で批准されなかったことは記憶に新しいが、それでも、フランスの将来が統合欧州にあることは間違いない。来るべき「ヨーロッパ」は歴史・文化・宗教などの所与に根拠を置くのか、それとも、ネーション以上に進化した近代のプロジェクトなのか。この問いは、国民国家と統合欧州の間の市民権の位置づけ、統合の目的性、「ヨーロッパ」の地理的限界、などの問題に直接関係する。

    第6回 『記憶の場』再考(1)記憶とはなにか?(國枝1)
     「文化」を考えるにあたって、「記憶」という概念、方法論が、どれほどの有効性を持ちうるのか検討するとともに、「記憶」が歴史的事象の叙述や、文学テキストの創造において果たす役割を概観し、以後3回の授業で用いられる「記憶」の意味内容を定義 する。
     また、補助テキストとしてもちいる、フランスで刊行された歴史書『記憶の場』(邦訳『記憶の場』全三巻、岩波書店)について紹介をする。

    第7回 『記憶の場』再考(2)アンシャン・レジームと革命(國枝2)
     フランスの歴史上最も重要な出来事であるといえるフランス革命が、19世紀において、どのような評価を得ていったのかをたどる。特に「旧体制(アンシャン・レジーム)」を一掃し、世界を再創造するというフランス革命像の形成について考察することによって、「記憶の再構成」の過程を明らかにしたい。
     補助テキスト:フランソワ・フュレ「アンシャン・レジームと革命」(『記憶の場』第1巻p.127-158.)

    第8回 『記憶の場』再考(3)ヴァンデー地域と記憶(國枝3)
     フランス革命以後の歴史を振り返ると、革命理念、共和国理念が決してすぐさま現実に移されたわけではないことがわかる。ここでは ヴァンデ(フランス西部)のような「地方」が、どのようにして「反革命的」象徴として人々に記憶されていったのか、その理由を探る。特にロマン主義的な思潮の中で、キリスト教概念が、革命以前とは異なる形で、浸透を果た した理由を検討していく。
     補助テキスト:ジャン=クレマン・マルタン「ヴァンデ ー 地域と記憶」(『記憶の場』第1巻p.127-158.)

    第9回 『記憶の場』再考(4)「ユダヤ人ーグレゴワール、ドレフュス、ドランシー」(國枝4)
     反ユダヤ主義は、西洋の歴史をつらぬき、またヨーロッパ全体に渡る広汎な
    歴史的事象である。この回では、19世紀後半のフランスに時代・場所をしぼり、この時期に形成された学問、当時で言えば科学的方法論にたった学問がいかに反ユダヤ主義と結びついていたかについて検討する。
     補助テキスト:ピエール・ビバンボーム「ユダヤ人ーグレゴワール、ドレフュス、ドランシー」

    第10回 「ことばと国家(1)」(古石1)
     私たちには日本=日本語、フランス=フランス語という図式がないだろうか。2回続きで、「ことば」をめぐる問題にみられる日本とフランスの国家体質の類似点と相違点を探ってみたい。初回は国語の成立と少数言語(地域語・少数言語、移民の言語)について考察する。

    第11回 「ことばと国家(2)」(古石)
     前回に続き、両国の自国語普及政策について考察する。植民地と言語の問題にも触れようと思う。

    第12回 「ことばと思考、そして文化(1)」(古石)
     第1回目の講義から通奏低音のように流れてきた「ことばと国家、ことばと社会」という問題を考えるにあたり、我々はもう少しミクロな視点からもものを見ておく必要があるだろう。よく「ことばは透明なツールではない」と言われる。それは「ことばは思考様式を決定する」という意味であったり、「ことばは文化を反映する」という意味であったりする。だが本当にそうだろうか。またもしそうであるなら、いかにして、どの程度までこれらの命題は正しいのだろうか。「ことば」というものの役割を明確に押さえておきたい。

    第13回 「ことばと思考、そして文化(2)」(古石)
     前回の講義で提起された問題を具体的な例を通じて検討する。ジェンダー、人称、敬語体系、等々について、日本語・フランス語・英語を視野にいれて考察する。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    学期末試験によって評価する。


5. 履修上の注意・その他

     この科目を履修するには、初回の授業に出席することが必須です。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    特になし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2007-03-12 03:55:48.883051


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