KGC


Keio University Shonan Fujisawa Campus
Course Summary (Syllabus)


MODELING AND SIMULATION (Takashi Iba

    Semester : 2007 Fall
    Code : 14150 / 2 Credits


1. Objectives/Teaching method

     人類のながい歴史のなかで、「生命とは何か」という問いかけは、幾度となく繰り返されてきました。そして「社会とは何か」ということも、絶えず問われてきました。しかし、これら生命と社会の原理は、現代の科学をもってしても、いまだに解明できていません。生命や社会というものは複雑であることに加え、動的に自らを変化させていく存在であり、従来の概念や方法ではとうてい太刀打ちできないのです。
     そこで、複雑で動的な生命・社会を理解するために、複雑系科学(the science of complex systems)の分野では、新しいアプローチで研究が行われています。それは、コンピュータ上にシミュレーションモデルを「つくって動かして理解する」というアプローチです(生命や社会に似た現象をヴァーチャルに「構成」して「理解」するので、このアプローチを「構成的理解」といいます)。実際、生命科学や社会科学のフロンティアを切り拓いている研究者たちは、複雑で動的な現象の本質を捉えた「モデリング」を行い、その「シミュレーション」を行うことで、生命現象・社会現象の理解を深めているのです。
     本講義では、このようなモデリングとシミュレーションの方法を学ぶとともに、複雑系科学におけるこれまでの成果を概観します。これにより、研究のフロンティアがどこにあるのか、何が未解決なのか、そしてどのように取り組めばいいのか、を考えていきます。各自のノート型パソコンでモデリングとシミュレーションを実際に行いながら、その面白さと可能性を味わってほしいと思います。


2. Materials/Reading List

    【教科書】
    教科書として、次の3冊を購入してください。宿題を通じて読んでいきます。
    ●『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭 崇, 福原 義久, NTT出版, 1998, ISBN-10: 4871885607)¥1,890
    ●『歴史の方程式:科学は大事件を予知できるか』(マーク・ブキャナン, 早川書房, 2003, ISBN-10: 4152085282)¥2,415
    ●『新ネットワーク思考:世界のしくみを読み解く』(アルバート=ラズロ・バラバシ, NHK出版, 2002, ISBN-10: 4140807431)¥1,995

    【参考文献】
    以下の文献は、授業に関係するおすすめの文献です。
    ○『経済物理学の発見』(高安秀樹, 光文社新書, 2004, ISBN-10:4334032672)※特におすすめ
    ○『複雑な世界、単純な法則:ネットワーク科学の最前線』(マーク・ブキャナン, 草思社, 2005, ISBN-10: 4794213859)※特におすすめ
    ○『スモールワールド・ネットワーク:世界を知るための新科学的思考法』(ダンカン・ワッツ, 阪急コミュニケーションズ, 2004, ISBN-10: 4484041162)
    ○『経済・情報・生命の臨界ゆらぎ:複雑系科学で近未来を読む』(高安 秀樹, 高安 美佐子, ダイヤモンド社, 2000, ISBN-10: 447883010X)
    ○『自己組織化の経済学:経済秩序はいかに創発するか』(ポール・クルーグマン, 東洋経済新報社, 1997, ISBN-10: 4492312404)
    ○『情報社会学序説:ラストモダンの時代を生きる』(公文 俊平, NTT出版, 2004, ISBN-10: 475710135X)
    ○『生命とは何か―複雑系生命論序説』(金子邦彦, 東京大学出版会, 2003, ISBN-10: 4130623036)
    ○『数学は世界を解明できるか:カオスと予定調和』(丹羽 敏雄, 中公新書(1475), 中央公論新社, 1999, ISBN-10: 4121014758)
    ○『複雑系: 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』(M.ミッチェル・ワールドロップ, 新潮文庫, 新潮社, 2000, ISBN-10: 4102177213)
    ○『カオス:新しい科学をつくる』(ジェイムズ・グリック, 新潮文庫, 新潮社, 1991, ISBN-10: 4102361014)
    ○『社会シミュレーションの技法:政治・経済・社会をめぐる思考技術のフロンティア』(ナイジェル・ギルバート, クラウス・G・トロイチュ, 日本評論社, 2003, ISBN-10: 453555241X)
    ○『創造的論文の書き方』 (伊丹 敬之, 有斐閣, 2001, ISBN-10: 4641076499)
    ○『創造の方法学』 (高根 正昭, 講談社現代新書(553), 1979, ISBN-10: 4061455532)


3. SCHEDULE

    #1 イントロダクション――複雑系とモデリング・シミュレーション
    授業の目標と全体像について説明します。そして、今なぜ、複雑系の視点とモデリング・シミュレーションの技法が重要なのか、ということを理解します。

    #2 シミュレーションによる分析と理解
    解析的に解くことができない現象に対して、シミュレーションによる分析・理解が有効であることを理解します。授業では、空港の待ち行列モデルとカオス生成モデルのシミュレーションを体験します。

    #3 不規則性を生み出す規則――カオス
    世界の複雑さはどのようにして生じるのでしょうか。その複雑性の生成メカニズムとして、「カオス」の概念・理論を取り上げます。カオスとは、「規則に従っているにもかかわらず、不規則な振舞いをする」現象のことです。

    #4 相互作用による秩序形成――自己組織化
    集中的なトップダウンの管理がなされていないシステムであっても、相互作用によってボトムアップに秩序が形成され得ることを理解します。ここでは、セル・オートマトンモデルと鳥の群れモデルを取り上げます。

    #5 モデリング・シミュレーション技法(1)
    社会における現象を、多数のエージェント(主体)の相互作用としてモデル化する「マルチエージェントモデル」の考え方を学びます。

    #6 モデリング・シミュレーション技法(2)
    モデリング・シミュレーションのツール(PlatBox Simulator および Component Builder)を用いて、実際にモデリングを行っていきます。このツールを用いれば、いわゆるプログラミング(プログラミング言語によるソースコード記述)をせずに、モデリングを行うことでシミュレーションモデルを作成できます。

    #7 モデリング・シミュレーション技法(3)
    前回に引き続き、モデリングとシミュレーションの演習を行います。

    #8 非平衡における動的な秩序(1)
    非平衡な状態においては、個々の構成要素の自由は動的に変化していますが、その全体レベルではある秩序が維持され得ることがわかっています。その秩序のひとつである「べき乗分布」について理解します。

    #9 非平衡における動的な秩序(2)
    非平衡な状態における「べき乗分布」生成のメカニズムと、「歴史」の重要性について理解します。

    #10 複雑ネットワークのモデリング・シミュレーション(1)
    近年の研究で、神経回路網やWWWネットワーク、友人ネットワークなど、自然と社会の様々なネットワークには共通の構造があることが発見されています。そのなかで、「スケールフリーネットワーク」と「スモールワールドネットワーク」の概念と形成原理について学びます。

    #11 複雑ネットワークのモデリング・シミュレーション(2)
    複雑ネットワークに関連するモデリングとシミュレーションを行います。

    #12 複雑ネットワークのモデリング・シミュレーション(3)
    前回に引き続き、複雑ネットワークに関連するモデリングとシミュレーションを行います。

    #13 総括
    授業を振り返り、モデリング・シミュレーション技法と複雑系の考え方についてまとめます。


4. Assignments/Examination/Grad Eval.

    ●授業は休まず出席し、腰を据えて取り組んでください。
    ●毎週、宿題を出します。これは、教科書を読んだり、モデリング・シミュレーションを実際に行うことで、授業内容の理解を深め、次週の予習・準備をするためのものです。読む分量はかなり多いですが、最先端に到達するために必要なことなので、がんばってついてきてください。
    ●学期末は、テストではなく、レポートを提出してもらいます。成績評価は、出席、宿題の提出回数と質、学期末レポート等から総合的に判断します。


5. Special Note

    ●授業や宿題において、各自のノート型パソコンを用いたモデリング・シミュレーションの演習を行います。自分のPCか、貸し出しPCを用意してください。

    ●この授業では、プログラミングや数学の知識・スキルは求めません。しかし、これらはこの分野の研究をする上でとても重要なスキルとなるので、この授業を通じてその必要性・重要性を感じてもらえればと思います。

    ●毎週、教科書を読む宿題が出されます。読む分量はかなり多いですが、最先端に到達するために必要なことなので、がんばってついてきてください。


6. Prerequisit / Related courses

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7. Conditions to take this course

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8. Relation with past courses

    「モデリングシミュレーション入門」*この科目を進級、卒業あるいは修了に関わる科目の単位として修得済みの学生は、自由科目としての履修のみ可能。


9. Course URL


2007-09-04 00:01:42.912477


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