KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


社会システム理論 (井庭 崇

    2008年度春学期 火曜日3時限
    科目コード: 30080 / 2単位
    カテゴリ: 14.先端導入科目-総合政策-社会イノベーション(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    この授業の目的は、社会を「システム」として捉える視点を身につけることです。ここで取り上げるのは、最新の「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。その理論によれば、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことで成り立つシステムであると捉えます。このような捉え方で、社会学者ニクラス・ルーマンは、次のような問題に答えようとしました。「社会的な秩序はどのようにして可能なのだろうか?」と。個々人は別々の意識をもち、自由に振る舞っているにもかかわらず、社会が成り立つ(現に動いている)、この不思議に取り組むのが、社会システム理論です。


    社会システム理論の捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができるようになります。また、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しています。まさに社会システム理論は、総合政策学的な/超領域的なアプローチの新しい基礎論といえるでしょう。授業でも、経済システム、法システム、政治システム、芸術システム、学問システム、教育システム、宗教システム、マスメディア、愛などについて取り上げます。


    この授業では、授業と並行して各自『社会システム理論』(ニクラス・ルーマン)を読み込んでもらいます。この本はかなり難解であるため、じっくり時間をかけて理解することが求められます。入門書を読んだり、噛み砕いた解説を聞いて、表面的に「分かった気」になるのではなく、難しいながらも理論書をじっくり読み、慣れ親しんでいくということを重視したいと思います。最初は本当につらいと思いますが、読み込んでいくほどじわじわと理解が深まっていき、最終的には読み始める前とは異なる自分になっていることに気づくはずです。みんなには、そのような経験をぜひしてほしいと思っています。この授業で、一緒にチャレンジしてみましょう!


2. 教材・参考文献

    【教科書】

    ●『社会システム理論(上)』(N・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995, ISBN:4769907472) ※定価¥7,949, 全479ページ
    この教科書は、学期を通じて読み込むので、各自購入してください。

    このほかの必要な資料は適宜配布します。




    【参考文献】

    ●『システム理論入門 (ニクラス・ルーマン講義録1)』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007, ISBN:4787707035) ※ルーマン自身によるレクチャーの記録です。比較的わかりやすく解説されています。

    ●『ルーマン/社会の理論の革命』(長岡 克行, 勁草書房, 2006, ISBN:4326601957) ※ルーマンの研究について詳しいおすすめの文献です。



    ●『社会システム理論(下)』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1993, ISBN:4769908083)

    ●『Social Systems』(Niklas Luhmann, Stanford University Press, 1995, ISBN:0804726256) ※『社会システム理論(上)(下)』の英語訳です。

    ●『エコロジーのコミュニケーション: 現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007, ISBN:4787707086)

    ●『ポストヒューマンの人間論: 後期ルーマン論集』(ニクラス・ルーマン, 東京大学出版会, 2007, ISBN:4130101056)

    ●『社会の経済』(ルーマン, 文真堂, 1991, ISBN:4830940395)

    ●『社会の法(1)』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2003, ISBN:458800767X)

    ●『社会の法(2)』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2003, ISBN:4588007688)

    ●『社会の芸術』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2004, ISBN:4588008005)

    ●『社会の教育システム』(ニクラス・ルーマン, 東京大学出版会, 2004, ISBN:413010098X)

    ●『マスメディアのリアリティ』(ニクラス・ルーマン, 木鐸社, 2005, ISBN:483322366X)

    ●『近代の観察』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2003, ISBN:4588007661)

    ●『信頼:社会的な複雑性の縮減メカニズム』(ニクラス・ルーマン, 勁草書房, 1990, ISBN:4326651202)

    ●『情熱としての愛:親密さのコード化』(ニクラス・ルーマン, 木鐸社, 2005, ISBN:4833223635)

    ●『社会システム理論の視座』(ニクラス・ルーマン, 木鐸社, 1985, ISBN:4-8332-2368-6)

    ●『ルーマン 社会システム理論』(ゲオルク・クニール, アルミン・ナセヒ, 新泉社, 1995, ISBN:4787795236)

    ●『ルーマンの社会理論』(馬場 靖雄, 勁草書房, 2001, ISBN:4326652551)

    ●『批判理論と社会システム理論:ハーバーマス=ルーマン論争』(J.ハーバーマス, N.ルーマン, 木鐸社, 1984, ISBN:4833202042)

    ●『ブルデューとルーマン: 理論比較の試み』(アルミン・ナセヒ, ゲルト・ノルマン(編), 新泉社, 2006, ISBN:4787706136)

    ●『新しい社会学のあゆみ』(新 睦人 (編), 有斐閣, 2006, ISBN:4641123020)

    ●『現代の社会科学者: 現代社会科学における実証主義と理念主義』(富永 健一, 講談社, 1993, ISBN:4061590960)※絶版


3. 授業計画

    第1回 イントロダクション
    ニクラス・ルーマンの提唱した「社会システム理論」の魅力はどこにあるのでしょうか? また、この理論はどのような可能性を秘めているのでしょうか? 授業では、ルーマンの社会システム理論について概観し、社会科学における「超領域的」(トランスディシプリナリ)なアプローチの基礎論としての可能性について考えていきます。

    第2回 社会システム理論の位置
    社会システム理論は、学問の歴史的変遷のなかのどのような位置にあるのでしょうか? 授業では、社会科学の歴史とシステム理論の歴史を眺め、両者を関連させながら理論的背景を理解します。

    第3回 ダブル・コンティンジェンシーと社会形成
    人は自由な意志にもとづいて考え、行動しています。それにもかかわらず、社会はある秩序をもって成り立っています。このようなことはいかにして可能なのでしょうか? 授業では、出来事や選択が「別様でもあり得る」(コンティンジェントである)ということ、そして、複数の人が集ると、お互いに相手を予測できないために自分の行為を決定できないという「ダブル・コンティンジェンシー」の問題が発生することを理解します。そして、「ノイズからの秩序」という考え方を用いて、社会形成の仕組みについて考えます。

    第4回 行為とコミュニケーション
    社会システム理論では、「コミュニケーション」は、従来の社会学でいう「行為」の延長線上にあるものではないと捉えます(つまり、単なる社会的行為や言語的行為ではないと捉えます)。それでは、いったいコミュニケーションとはどのような出来事なのでしょうか? 授業では、従来のような「情報の移転」という捉え方ではない新しい「コミュニケーション」の捉え方について理解します。そのうえで、「コミュニケーション」が「行為」とはどのように異なるのかについて考えていきます。

    第5回 コミュニケーションの不確実性とメディア
    コミュニケーションにはいろいろな不確実性が伴うため、本来は成立が困難なものです。それにもかかわらず、日常生活ではふつうにコミュニケーションが成り立っています。いったいどのような仕組みでコミュニケーションが実現できているのでしょうか? 授業では、コミュニケーションにまつわる三つの不確実性(他者理解の不確実性、到達の不確実性、コミュニケーション成果の不確実性)と、それらの不確実性を確実性へと変換するメディア(言語、拡充メディア、コミュニケーション・メディア)について理解します。

    第6回 コミュニケーションの連鎖としての社会システム
    社会システム理論では、社会の構成要素は人ではなく「コミュニケーション」であるといいます。ここに、社会の捉え方に関する理論的革新があります。それでは、コミュニケーションを中心として社会を捉えると、どのように捉えることができるのでしょうか? 授業では、社会をコミュニケーションの連鎖として捉える視点を身につけます。また、自分で自分を生み出し続けるシステムを理解するうえで重要な「自己言及」(自己準拠)や「オートポイエーシス」(自己生成)の概念についても学びます。

    第7回 社会システムの閉鎖性/開放性と環境
    自分で自分を生み出すオートポイエーシス(自己生成)のシステムは、ある種の閉鎖性と、ある種の開放性を併せ持っています。システムの閉鎖性と開放性は本来、対をなす概念でしたが、その両方をもつとはどういうことなのでしょうか? 授業では、システムの作動上の閉鎖性と、そのうえでの開放性について理解します。また、「環境」の概念や、システムと環境の関係についても理解します。

    第8回 意識の連鎖としての心的システム
    社会システム理論では、人間の思考も、オートポイエーシス(自己生成)のシステムとして捉えられます。それはどのようなシステムなのでしょうか? また、社会システムとの関係はどうなっているのでしょうか? 授業では、意識が意識を生み出し連鎖することで成り立つ「心的システム」について考えます。そして、複数の心的システムはお互いに到達することができないことから、コミュニケーションが不可欠となるということを理解します。また、心的システムと社会システムとの関係についても考えていきます。

    第9回 ゲストスピーカー講演(1)
    授業内容に関連するゲストスピーカー講演を予定しています。

    第10回 社会の機能分化と構造的カップリング
    社会システム理論では、近代社会は、経済、法、学問、宗教など、機能的な分化が起こったと捉えます。つまり近代社会では、経済システム、法システム、学問システム、宗教システムなどがそれぞれ自律的に動いているということです。それでは、機能分化したシステムは、お互いにどのような関係性にあるのでしょうか? 授業では、全体と機能分化したシステムの関係を理解し、さらに、機能分化したシステム同士の関係性を捉えるための「構造的カップリング」の概念を学びます。

    第11回 相互行為、組織、社会
    社会システム理論では、対面コミュニケーションや組織についてはどのように捉えることができるのでしょうか? 授業では、社会システムのタイプとして、「相互行為」、「組織」、「社会」(全体社会)について取り上げます。これらは基本的には同じ原理(コミュニケーションの連鎖など)で成り立っていますが、場の共有や地位・役割などの特徴があるということを理解します。

    第12回 ゲストスピーカー講演(2)
    授業内容に関連するゲストスピーカー講演を予定しています。

    第13回 総括
    これまでの授業を振り返って、総括を行います。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    成績評価は、毎回提出してもらう宿題や、授業中の課題、学期末のテスト等から総合的に評価します。


5. 履修上の注意・その他

    授業と並行して読んでもらう『社会システム理論』はかなり難解であるため、じっくり時間をかけて理解することが求められます。この授業は、単に講義を受けていればよいということではないので、注意してください。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    「現代と社会システム」*この科目を進級、卒業あるいは修了に関わる科目の単位として修得済みの学生は、自由科目としての履修のみ可能。


9. 授業URL


2008-02-27 18:44:01.514181


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