KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


言語とヒューマニティ (國枝 孝弘

    2008年度秋学期 水曜日1時限
    科目コード: 32200 / 2単位
    カテゴリ: 16.先端導入科目-総合政策-国際戦略(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    「喪の修辞学」:人間と言語の関係、および言語からみた世界理解を考えるにあたって、今学期は「喪」をテーマにし、個人から集団のレベルにまでわたって、「喪」がどのように表象されているかを検討する。私たちは、自分の死を免れることはできないが、実は他者の死にもたえず晒され続けている存在でもある。父や母のような親しい者の死というきわめて私的な「喪」から、集団殺戮のような多くの人々の死という公的な「喪」まで、強く意識する場合から、普段は意識しない場合もふくめて、さまざまな他者の死に触れ合っているのである。
     さらに、「喪」は、残された他者が「生き残っている」という問題をはらんでいる。そのために、私たちは生き続ける以上、この死と何らかの関わりをもたざるをえない。しかしこの問題は必ずしも心理学的な次元だけではなく、この死をどのように意味づけるかという点においてきわめて言語表象の次元と深い関係をもっている。
     この授業では、この言語表象が、個人的な意味づけだけではなく、社会全体においても公的な意味づけが行なわれている歴史的事実に着目し、世界を理解するひとつの手がかりとして「喪」の表現のあり方について考えてゆく。


2. 教材・参考文献

    各回の授業案内を参照のこと


3. 授業計画

    第1回 「喪」とはなにか
    「喪」とは人間の存在についてどのような意味をもつのか、授業の計画を説明するとともに、授業であつかう概念について説明する。

    第2回 「忘れる」ことと「書く」こと
    「喪失」という事態にあって、「書く」という私たちの日常的な行為が、いかに「忘却」に抗して生きる根拠をつくっていくのかを考える。

    第3回 死の表象
    死は私たちにとって必然的帰結であるが、同時に最も大きな謎でもある。この死をいかに表象することができるのか、またそのときに死は他者との関係にどのような要請をもたらすのか。死の表象がいかに他者との関係の変容をもたらすのか考察する。

    第4回 親しい者の死
    私たちは、近親者の死を体験したとき、それをどのように表そうとするのか。かけがえのない存在の表象の難しさについて考える。

    第5回 弔う作業
    私たちは不条理な死に直面したときに、それをどのように解釈して、生きる力をふたたび回復していくのか。喪の表象と回復の過程について考えていく。

    第6回 名づけと個別性
    歴史的な災厄の中で多くの人が死ぬ時、その人々は往々にして犠牲者としてひとくくりにされる運命にある。その中で一人一人の個別性はどのようにして救い出すことができるのか、個人の記憶と表象の問題を考える。

    第7回 ホロコーストと表象
    未曾有の民族大殺戮であったホロコーストはしばしば未曾有であるがゆえに、「表象不可能」と言われる。この「不可能性」がはらむ言語表象の問題について考える。

    第8回 伝統と移住
    喪失するのは、他者の存在だけではない。故郷、言語、伝統など自分の所属を明らかにするものをはぎとられた人々もいる。そうした文化事象の喪失と表象について考える。

    第9回 愛の喪失と言語
    恋愛対象の喪失は、ときに人間を絶望へと至らせる。この生の否認に対して、私たちはどのように打ち克って表現を獲得するのか。愛の言語化について考える。

    第10回 文学と歴史
    同じ歴史的事件を表象するにしても文学と歴史には微妙な差異がある。ディスクールと修辞の問題から、歴史叙述について考察する。

    第11回 歴史における喪
    歴史は過去を対象とする。その意味はすでに「不在」となったものについて、いかに観察の対象を定め、分析・解釈をしていくかということである。この歴史における現在と過去の関係について考えていく。

    第12回 記念の時代
    社会において「記念」される対象とは何か。何が記念の対象となり、何が忘却にさらされるのか、社会にひそむこのメカニスムを解明し、私たちの記憶がどのように作られるのか検討する。

    第13回 喪と生の根拠
    これまでの授業を振り返り、喪という他者の喪失の契機が、人間の生きる根拠へどのように変貌するのか、その変貌における言語の役割を考える。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    1) 授業感想レポート(10回 400字程度):30点

    2) 中間レポート:30点

    3) 最終レポート:40点


5. 履修上の注意・その他

    なし


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2008-08-27 16:48:34.783363


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