KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


IT革命論 (夏野 剛

    2008年度秋学期 月曜日4時限
    科目コード: 95013 / 2単位
    カテゴリ: 5.特設科目(大学院)


1. 主題と目標/授業の手法など

    1990年代後半からの爆発的なインターネットの普及、およびコンピューターハード・ソフト技術の進化は社会・経済、そして国民の生活に大きな革新をもたらした。インターネットを通じた商取引の規模が拡大するとともに、製造、流通、マーケティング、販売チャネルといった企業行動のすべてのレイヤーで変化が起きた。企業の情報システムは革新的に進化するとともに、その情報がネットを通じて消費者にもアクセスできるようになることで、市場の情報の非対称性が緩和され、消費行動にも大きな変化を及ぼしつつある。また、ITによる技術革新は、証券市場の電子化、電子マネーの台頭、デジタルコンテンツ流通の拡大、電子機器のネット化、携帯電話のマルチメディア化など、数多くの社会経済現象を生み出し、それらの社会・経済全体に与えている影響は、まさに「革命」とも呼べる、大きな国民生活の変化を生み出している。
    IT革命は企業経営のあり方にも大きな課題を突きつけている。日本企業が強みとしてきた従来の経営システムが通用しなくなってきているのだ。情報の非対称性を前提としたピラミッド的人事システム、右肩上がりの経済成長を前提とした年功序列システム、企業内情報共有を最重視した家族主義とも言える終身雇用システムなどは、IT時代にはそぐわないものになってきているが、多くの大企業でこの根本構造の改革に手をつけられずにいるのもまた実態である。今、企業にはIT革命のスピードについていくための経営が求められているが、多くの経営者はITとは無縁の世代であるという矛盾も露呈している。
    本講では、IT革命によって「何が変わったのか」を、マクロ・ミクロの視点から幅広く概説し、その社会・経済的意義を再認識するとともに、弊害や負の側面についても触れていく。まさに受講者が、この十数年間、自ら実体験してきた社会変化のもつ、経済学的意義、経営学的意義、社会学的意義を説明していく。受講対象者は、将来IT産業に関る方だけでなく、あらゆる分野の経営、政策、研究に従事しようとする方とし、講義の内容も、ITを活用した経営手法といった方法論にとどまらないよう考慮していく。
    授業は、講義と演習からなるが、受講者のアクティブな参加(発言)を歓迎する。講義では、ゲストスピーカーによる実例研究も織り交ぜる。演習では、受講者各自がテーマを決め、IT革命のもたらした変化を研究し、発表してもらい、それに基づく討議を行う。


2. 教材・参考文献

    松永真理「iモード事件」角川文庫
    塩沢由典「複雑系経済学入門」生産性出版
    ほか、随時お知らせします。


3. 授業計画

    第1回 オリエンテーション
    ➢ 講義テーマ
     IT革命を取り巻く時代背景
     IT革命で何が変わったのか。
     本講の目的と内容説明
    ➢ キーワード
    情報の非対称性、技術のコモディティー化、多様性、eコマース、ダイレクトアクセス、ビジネスモデル

    第2回 IT革命が起こした変化
    ➢ 講義テーマ
     産業別変化分析
     PC革命、ケータイ革命とBB革命
    ➢ キーワード
    カスタマーオペレーション、ブロードバンド、iモード、Yahoo!BB、FTTH

    第3回 IT革命分析
    ➢ 講義テーマ
     IT革命の理論的分析(複雑系的アプローチ)
    ➢ キーワード
    創発、ポジティブフィードバック、外部経済性、デファクトスタンダード

    第4回 実例研究(1)「iモード」
    ➢ 講義テーマ
     通信業界のIT革命
     技術とビジネスモデルの組み合わせ
     オープンかクローズか?
     Win−Winの大切さ
    ➢ キーワード
    デジタルコンテンツ、3G、デファクトとデジュールスタンダード、プラットフォーム、垂直統合、課金ゲートウェイ

    第5回 発表テーマプレゼン
    ➢ 講義テーマ
     各人ごとに発表テーマのプレゼンを行う。
     なぜそのテーマを選んだか(問題提起)、どんな結論を想像しているか(仮説)、どんなアプローチで演習をすすめていくか(方法)を含むこと。

    第6回 実例研究(2)「航空業界」(ゲストスピーカー)
    ➢ 講義テーマ
     eチケットの意義
     顧客囲い込み、顧客ロイヤリティ
     旅行代理店の役割
    ➢ キーワード
    FFP(フリークエントフライヤープログラム)、eチケット、webチェックイン、SKIP、非接触ICカード、おさいふケータイ
    ➢ ミニペーパー(課題)1
    ゲストスピーカーの講義についての感想と自分の意見

    第7回 標準化の研究
    ➢ 講義テーマ
     標準化の意義と功罪
     デファクトとデジュールの違い
     ゲーム理論的考察
    ➢ キーワード
    ブルーレイとHDDVD(VHSとベータ)、WiiとPS3、3G、PHS、地デジ・ワンセグ、SuiCaとおサイフケータイ

    第8回 メディアの変貌
    ➢ 講義テーマ
     メディアの役割の変化
     マスメディアからインタラクティブメディアへ
     ビジネスモデルの崩壊
    ➢ キーワード
    放送と通信の融合、UGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)、YouTubeとニコ動
    ➢ ミニペーパー(課題)2
    将来のメディアについて自分なりの予測をしてみてください。どんなメディアになっているでしょうか?

    第9回 マーケティング手法の変貌
    ➢ 講義テーマ
     ネット広告の台頭
     インタラクティブメディアの優位点
     インプレッション(印象)からエフィシェンシー(効率)へ
     データベースマーケティングは万能か?
    ➢ キーワード
    リスティング広告、カスタマイゼーション、視聴率とクリックレート、位置情報、ターゲット広告

    第10回 顧客リレーションシップの変貌
    ➢ 講義テーマ 
     ダイレクトアクセス
     流通・在庫コスト vs. 配送コスト
     中間取次の役割
    ➢ キーワード
    eコマース、囲い込み、フリークエントプログラム、二八の法則

    第11回 貨幣流通システムの変貌
    ➢ 講義テーマ
     現金決済から電子決済へ
     電子マネーの台頭
     電子決済のビジネスモデル
    ➢ キーワード
    クレジット、デビット、SuiCa、Edy、iD、ポイント

    第12回 プレゼンテーション
    ➢ 講義テーマ
     個々人の発表とそれに基づくディスカッション

    第13回 まとめ;IT革命の勝者になるための条件
    ➢ 講義テーマ
     マネージメントの要件の変化(管理からビジョンへ)
     ヒューマンネットワークの重要性
     スピードか内製か
     日本の競争力強化のために
    ➢ キーワード
    日本型経営システム、年功序列、終身雇用、研究開発投資、M&A、マーケットキャップ、スピード経営、コンプライアンス


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    テーマ発表、クラスコントリビューション(発言・参加による貢献)、期間中数回のミニペーパー(課題)による成績評価を行います


5. 履修上の注意・その他

    特になし


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2008-08-26 11:02:40.383465


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