KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


地域と社会(米州) (山本 純一

    2009年度秋学期 木曜日4時限
    科目コード: 32150 / 2単位
    カテゴリ: 16.先端導入科目-総合政策-国際戦略(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    南北アメリカ大陸は広大で、多様性に富む地域である。北はアングロアメリカ、南はラテンアメリカ、さらに後者は、先住民との混血が進んだ地域(インディオ的ラテンアメリカ)、先住民を排除した地域(ヨーロッパ的ラテンアメリカ)、先住民を抹殺し、アフリカからの奴隷とヨーロッパが混淆した地域(カリブ海地域)に分けることができる。だが、近年はグローバリゼーションの進展にともなって、地域統合や移民による接触・交流・摩擦が高まっている。そこで本科目では、グローバル化時代の均質化や格差化によってもたらされている当該地域社会の問題や矛盾そして未来への可能性を、映像および担当者の体験を交えて紹介、議論する。


2. 教材・参考文献

    必読文献は、西川長夫(2001)『増補 国境の越え方――国民国家論序説』平凡社ライブラリー、山本純一(2004)『メキシコから世界が見える』集英社新書である。各回の参考文献については、授業計画を参照。また、講義資料は授業前日までにグローバルキャンパス(http://gc.sfc.keio.ac.jp)もしくは山本純一研究会HP(http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/)の担当科目のサイトにアップしておく予定なので、こちらから入手すること。原則として授業では配布しない。


3. 授業計画

    第1回 (10月1日)  グローバリゼーションとネオリベラリズム
    授業の進め方をオリエンテーションしたのち、本科目のキーワードであるグローバリゼーションとネオリベラリズム(新自由主義)について議論する。
    参考文献:
    西川長夫『増補 国境の越え方――国民国家論序説』平凡社、2001年
    A・アパデュライ(門田健一訳)『さまよえる近代―グローバル化の文化研究』平凡社、2004年
    J・トムリンソン(片岡信訳)『グローバリゼーション―文化帝国主義を超えて』青土社、2000年
    R・ロバートソン(阿部美哉訳)『グローバリゼーション―地球文化の社会理論』東京大学出版会、1997年
    S・サッセン(伊豫谷登士翁訳)『グローバリゼーションの時代―国家主権のゆくえ』平凡社、1999年
    D・ハーヴェイ(渡辺治監訳)『新自由主義―その歴史的展開と現在』作品社、2007年

    第2回 (10月8日)アメリカ大陸にとってのグローバリゼーション
      アメリカ大陸にとってグローバリゼーションの始めが西洋文明による野蛮の発見=征服にあったこと、そしてこれによって世界はまさに球として「閉じた」ことを論ずる。
    参考映像と参考文献:「新大陸征服の野望」
    西川長夫(編)『ラテンアメリカからの問いかけ―ラス・カサス、植民地支配からグローバリゼーションまで』人文書院、2000年
    E・オゴルマン(青木芳夫訳)『アメリカは発明された―イメージとしての1492年』日本経済評論社、1999年
    E・ガレアーノ(大久保光夫訳)『収奪された大地―ラテンアメリカ500年』藤原書店、1991年
    トドロフ、ツヴェタン(1986)『他者の記号学――アメリカ大陸の征服』(及川・大谷・菊地訳)法政大学出版局
    A・G・フランク(山下範久訳)『リオリエント―アジア時代のグローバル・エコノミー』藤原書店、2000年

    第3回 (10月15日)豊かなアメリカと貧しいアメリカ
    アメリカ合衆国の国民国家としての特質を、同じ共和国のフランスと比較して論ずる。
     参考文献:
     アレント『革命について』(志水速雄訳)ちくま学芸文庫、1995年
    シュレージンガーJr.『アメリカの分裂』(都留重人監訳)岩波書店、1992年
     トクヴィル『アメリカのデモクラシー第一巻(上)(下)』(松本礼二訳)岩波文庫、2005年
    ドブレ『娘と話す 国家のしくみってなに?』(藤田真利子訳)現代企画室、2002年
     ハンチントン『分断されるアメリカ』(鈴木主税訳)集英社、2004年
    古矢旬『アメリカニズム―「普遍国家」のナショナリズム』東京大学出版会、2002年
     大津留(北川)智恵子・大芝亮編著『アメリカのナショナリズムと市民像―グローバル時代の視点から』ミネルヴァ書房、2003年
     スコッチポル、シーダ『失われた民主主義―メンバーシップからマネージメントへ』(河田潤一訳)慶應義塾大学出版会 、2007年
    ベラー、ロバート・N編著『心の習慣―アメリカ個人主義のゆくえ』(島薗進・中村圭志訳)みすず書房、1991年
    松本悠子『創られるアメリカ国民と「他者」―「アメリカ化」時代のシティズンシップ』東京大学出版会、2007年

    第4回 (10月22日)「帝国」としてのアメリカ
    現在のアメリカ合衆国は「帝国」として語られることが多い。その「帝国」とは何か? 
    近現代史からアメリカ帝国主義を考える。
     参考文献:
     生井英孝『興亡の世界史第19巻 空の帝国 アメリカの20世紀』講談社、2006年
     ヴァラダン『自由の帝国―アメリカン・システムの世紀』(伊藤剛ほか訳)NTT出版、2000年
    小倉英敬『侵略のアメリカ合州国史―<帝国>の内と外』新泉社、2005年
     高橋章『アメリカ帝国主義成立史の研究』名古屋大学出版会、1999年
     ネグリ&ハート『<帝国>―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』
    (水嶋一憲ほか訳)以文社、2003年
     パニッチ&ギンディン『アメリカ帝国主義とはなにか』(渡辺雅男訳)こぶし書房、2004年
    山本吉宣『「帝国」の国際政治学―冷戦後の国際システムとアメリカ』東信堂、2006年

    第5回 (10月29日)若きゲバラが見た南米
    ロバート・レッドフォードがプロデュースした映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』を題材に、ブエノスアイレス大学の医学生であったエルネスト・チェ・ゲバラが見た南米の、今も変わらぬ現実とその後変化した現実の両面を読み解く。
    参考映像と参考文献:『モーターサイクル・ダイアリーズ』
    エルネスト・チェ・ゲバラ『モーターサイクル・ダイアリーズ』(棚橋加奈江訳)角川文庫、2004年
    エルネスト・チェ・ゲバラ『ゲバラ日記』(高橋正訳)角川文庫、1999年
    戸井十月『チェ・ゲバラの遥かな旅』集英社、2004年
    三好徹『チェ・ゲバラ伝』原書房、2001年

    第6回 (11月5日)ラテンアメリカが日本に示唆するものは何か
    特別講師:石井陽一(神奈川大学名誉教授)
    日本では外国の先例といえば、先進国のそれに範を求めるのが通例だが、途上国、中進国にも意外と示唆に富むものがある。ラテンアメリカが日本に示唆するものとして、ネオリベラリズム、市場統合、汚職・腐敗、市民社会、移民社会、安全保障などへの対応を取り上げてみたい。
    参考文献:山本純一『メキシコから世界が見える』、集英社新書、2004年
    伊藤千尋『反米大陸ー中南米がアメリカにつきつけるNO-』、集英社新書、2007年
    石田博士『中南米が日本を追い抜く日 三菱商事駐在員の目』、朝日新書、2008年
    足立力也『丸腰国家〜軍隊を放棄したコスタリカ 60年の平和戦略〜』、扶桑社新書、2009年
    石井陽一『「帝国アメリカ」に近すぎた国々 ラテンアメリカと日本』、扶桑社新書、2009年

    第7回 (11月26日)インディオからの異議申し立て:サパティスモの可能性と課題
     新自由主義(市場原理主義)的グローバリゼーションに反対し、先住民の権利と文化の擁護、自由・民主主義・正義を求めて武装蜂起したサパティスタ国民解放軍の理念と活動を最新のフィールドワークを交えて検証する。
    参考映像と参考文献:「Zapatista」「メキシコのゲリラ」
    山本純一『インターネットを武器にした<ゲリラ>――メキシコ・サパティスタ国民解放軍の闘争と言説に関する一研究』慶應義塾大学出版会、2002年
    山本純一『メキシコから世界が見える』集英社新書、2004年
    山本純一「サパティスタの挑戦――反グローバリズム・新ナショナリズム・脱国家ローカリズム」『ラテンアメリカ・レポート』2003年第20巻第2号、アジア経済研究所
    山本純一「社会運動とインターネット――サパティスタ運動に関する論争をめぐって」梅垣理郎編『総合政策学の最先端 第郡』慶應義塾大学出版会、2003年
    山本純一「<帝国>に抗するサパティスタ――マルチチュードの可能性」『神奈川大学評論』第45号、2003年7月
    「山本純一の視点」(http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/viewpoint/)
    崎山政毅『サバルタンと歴史』青土社、2001年
     サパティスタ民族解放軍(太田昌国・小林致広編訳)『もう、たくさんだ!――メキシコ先住民
    蜂起の記録1』現代企画室、1995年
    G.ロビラ著・柴田修子訳『メキシコ先住民女性の夜明け』日本経済評論社、2005年
    マルコス/イボン・ル・ボ著・佐々木真一訳『サパティスタの夢』現代企画室、2005年

    第8回 (12月3日)メキシコと日本を結ぶコーヒーのフェアトレード
    担当者がプロジェクトマネージャーを務めたJICA草の根技術協力事業の結果実現した、メキシコと日本を結ぶコーヒーのフェアトレードを紹介し、望ましい自立支援のあり方を考える。
    参考文献・映像:
     PARCビデオ「コーヒーの秘密」
    山本純一『メキシコから世界が見える』集英社新書、2004年
      山本純一「コーヒーのフェアトレードの可能性と課題――メキシコ・チアパス州の2つの生産者協同
    組合を事例として」野村・山本編(2006)所収
    山本純一「開発支援とフェアトレードにおける中間組織の役割―FTPの活動を事例として」田島英一・山本純一編『協働体主義―中間組織が開くオルタナティブ』慶應義塾大学出版会(近刊)

    第9回 補講(12月5日)キューバの光と影
    経済危機を生き延びる手段として実践されているキューバの都市型有機農業ならびに革命の恩恵(教育と医療制度)と負の側面(人権と自由)について考える。
     参考文献・映像:
       吉田太郎(2002)『有機農業が国を変えた』コモンズ
       吉田太郎(2002)『200万都市が有機野菜で自由できるわけ』築地書館
       吉田太郎(2004)『1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ』築地書館
       山岡加奈子「吉田(2004)に対する書評」
    http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Latin/pdf/210208.pdf
       マイケル・ムーア(2007)『シッコ』(映画)
       トマス・グティエレス・アレア(1993)『苺とチョコレート』(映画)
     ジュリアン・シュナーベル(2003)『夜になるまえに』(映画)

    第10回 (12月10日)ラテンアメリカへの日系移民:移民か棄民か
    戦前、国策としての「口減らし」のため、南米への日系移民がたどった苦難の道、移民先社会での差別、そして日系移民社会内部における差別・対立の諸相を点描したのち、この「棄民」政策は戦後の高度成長時代にも続けられ、まさに「夢」の約束手形を切った日本政府(国家)に現在も責任があることを明らかにする。
    参考映像と参考文献:NTV(1997)「出稼ぎ」
    伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』有信堂、2001年
    大串和雄「フジモリ問題をめぐる10の疑問」『日刊ベリタ』、2002年
    遅野井茂雄『現代ペルーとフジモリ政権』アジア経済研究所、1995年
    小林忠太郎『ドミニカ移住の国家犯罪――移民という名の偽装「海外派兵」』八月書館、2004年
    萱野稔人『国家とはなにか』以文社、2005年
    村上勇介『フジモリ時代のペルー――救世主を求める人々、制度化しない政治』平凡社、2004年
    増田義郎・柳田利夫『ペルー 太平洋とアンデスの国――近代史と日系社会』中央公論新社、1999年
    柳田利夫編著『リマの日系人――ペルーにおける日系社会の多角的分析』明石書店、1997年
    柳田利夫編『ラテンアメリカの日系人――国家とエスニシティ』慶應義塾大学出版会、2002年
    山脇千賀子「人の移動・国家・生活の論理」清水透編著『ラテンアメリカ――統合圧力と拡散のエネルギー』大月書店、1999年
    若槻泰雄『外務省が消した日本人――南米移民の半世紀』毎日新聞社、2001年

    第11回 (12月17日)ブラジル経済の2つの挑戦
    特別講師:山崎圭一(横浜国立大学教授)
     ブラジル経済は、多くの課題をかかえているが、とくに(1)環境を守りつつの貧困撲滅と(2)グローバル時代の国際競争力の獲得が、重要であろう。いいかえるとサスティナブルな発展とビジネスの発展の2つといえる。両方を視野にいれつつ、ブラジルの「連帯経済(Economia Solidária)」の諸経験を「参加型予算」「回復工場」「社会的統合」などをキーワードに紹介し、今後を展望してみたい。
      参考文献:
    篠田武司・宇佐見耕一『安心社会を創る―ラテン・アメリカ市民社会の挑戦に学ぶ』新評論、2009年
    住田育法・萩原八郎・山崎圭一(共編)『ブラジルの都市問題』春風社、2008年
    山崎圭一「クリチバ市の家庭系廃棄物政策」『ラテンアメリカ時報』通巻第1384号、秋号→日本ラテン・アメリカ協会のインターネット・サイトより、ログイン・ネーム登録(無料)をへて、フリー・ダウンロード可能(URLは、http://www.latin-america.jp/)。

    第12回 (1月7日)移民からデカセギへ:外国籍住民との身近な共生を考える(書評・映画評の提出締切日)
    現在、日本にはラテンアメリカから「デカセギ」として働きに来ている人がおり、中には永住を決意している家族もいる。しかし、日本社会との軋轢は少なくなく、在日・沖縄・アイヌ等の問題も含め、日本が21世紀の国際化そして共生の時代にふさわしい社会かがどうかが問われている。
    参考文献:
    渕上英二『日系人証明』新評論、1995年
    花崎皋平『増補 アイデンティティと共生の哲学』平凡社、2001年
    伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』有信堂、2001年
    Alvaro Del Castillo, Los Peruanos en Japón, 現代企画室、1999年

    第13回 (1月14日)優秀書評・映画評のプレゼンテーションと講評(授業評価・改善案の提出締切日)
    優秀と認められた書評もしくは映画評を提出した学生諸君に10分程度のプレゼンテーションをお願いします。担当者からは全体および優秀作品についての講評をします。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    課題は、1)毎回の講義に対する質問・感想・コメント(800字程度。次回の講義の前々日までにWEB上で提出)、2)本科目と関連する文献または映像いずれかに関する書評または映画評1本(枚数自由)、3)授業評価・改善案。なお、書評(映画評)は(読書)感想文や要約ではない。取り上げた文献や映画を自分の視点から批評、評価しなければならない。

    成績評価方法は以下の通り。毎回のコメント・感想・質問(50%)、書評または映画評(40%)、出席点(10%)、授業評価・改善案(プラスアルファ点)。試験は実施しない。


5. 履修上の注意・その他

    本講義の履修を考えている学生はあらかじめ、山本純一(2004)『メキシコから世界が見える』(集英社新書)を読んでおくことが望ましい。また、スペイン語や山本が担当する「開発とローカリズム」の受講を考えている学生には本科目の履修を強く勧める。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    「リージョナルアナトミー論D」「リージョナルアナトミー論E」*これらの科目を進級、卒業あるいは修了に関わる科目の単位として修得済みの学生は、自由科目としての履修のみ可能。


9. 授業URL


2009-08-07 16:21:09.699733


Powered by SOI Copyright(c) 2002-2019, Keio University Shonan Fujisawa Campus. All rights reserved.
このサイトの著作権について