KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


開発とローカリズム (山本 純一

    2009年度春学期 木曜日4時限
    科目コード: 65020 / 2単位
    カテゴリ: 22.先端開拓科目-総合政策-国際戦略(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    本科目では、開発の理論と実践をローカルな<現場>に即して読み解き、当該地域にとって望ましい開発や開発支援のあり方を探求する。具体的には、開発をめぐる様々な理論を概観したのち、担当者を含め、ラテンアメリカ、アジアなどの現場で開発支援をしている団体・個人の実践活動を紹介し、受講生を交えて議論する。
    課題は、リアクションペーパー(質問・コメントなどを1200字程度にまとめ、次回講義の4日前(日曜日)までにWEB上で提出すること)、グループワークもしくは期末レポートである。試験は行わない。


2. 教材・参考文献

    各回の文献を参照のこと。


3. 授業計画

    第1回 (4/9) オリエンテーション、なぜ「開発とローカリズム」なのか
    本科目の目的・授業計画を紹介し、「開発」の起源とその意味、開発問題とともに生み出された「低開発」「第三世界」という概念(言説)について考察したのち、100年に一度といわれる経済危機の中にあってなぜ地域(ローカル)の力が求められているのかを議論する。
    課題文献(配布):
     山本純一「書評『南部メキシコの内発的発展とNGO――グローカル公共空間における学び・組織化・対抗運動』」『アジア経済』掲載予定
    参考文献:
    Escobar, Arturo (1995), Encountering Development: The Making and Unmakig of the Third World, Princeton: Princeton University Press.
    ヴォルフガング・ザックス編(1996)『脱「開発」の時代―現代社会を解読するキイワード辞典』晶文社(とくにG・エステバ「開発」の章)
    参考文献:
    Escobar, Arturo (1995), Encountering Development: The Making and Unmakig of the Third World, Princeton: Princeton University Press.
    ヴォルフガング・ザックス編(1996)『脱「開発」の時代―現代社会を解読するキイワード辞典』晶文社(とくにG・エステバ「開発」の章)

    第2回 (4/16) 近代化論とネオリベラリズム
    開発は好むと好まざるとにかかわらず近代化を志向する。その近代化とは何か、そして現在の近代化論とでもいうべきネオリベラリズム(新自由主義)に関する議論を概観する。
    課題文献(宿題として読んでおくこと):
    鈴木紀(2001)「開発問題の考え方」菊池京子編『開発学を学ぶ人のために』世界思想社
    D・ハーヴェイ(2007)『新自由主義―その歴史的展開と現在』(渡辺治監訳)作品社
    参考文献:
    富永健一(1996)『近代化の理論――近代化における西洋と東洋』講談社学術文庫
    二宮厚美(1999)『現代資本主義と新自由主義の暴走』新日本出版社
    渡辺治(2001)『日本の大国化とネオ・ナショリズムの形成』桜井書店
    魚住昭・斉藤貴男(2003)『いったい、この国はどうなってしまったのか!』NHK出版
    「21世紀日本の構想」懇談会(2000)『日本のフロンティアは日本の中にある』講談社
    古賀勝次郎(1983)『ハイエクと新自由主義―ハイエクの政治経済学研究』行人社
    渡辺幹雄(1996)『ハイエクと現代自由主義―「反合理主義的自由主義」の諸相』春秋社
    矢島欽次編著(1991)『新自由主義の政治経済学』同文舘
    ミルトン・フリードマン(1984)『政府からの自由』(西山千明監修、土屋政雄訳)中央公論社
    金子勝(1999)『反グローバリズム――市場改革の戦略的思考』岩波書店
    ―――(1999)『反経済学――市場主義的リベラリズムの限界』新書館

    第3回 (4/30)近代化論に対するラテンアメリカからの反論:従属論から世界システム論へ
    近代化論に対する「周辺」からの挑戦といえる従属論の歴史的意義とこれに対する批判を紹介したのち、21世紀の新自由主義時代におけるその役割を再評価する。
    参考文献:
    クリストバル・カイ(2002)『ラテンアメリカ従属論の系譜――ラテンアメリカ:開発と低開発の理論』(吾郷健二監訳)大村書店
    イマニュエル・ウォーラーステイン(1981)『近代世界システム1、2』(川北稔訳)岩波現代選書
    山下範久(2003)『世界システム論で読む日本』講談社選書メチエ

    第4回 (5/7) メキシコ貧農の経済ネットワーク(グループワークかレポートかの選択締切)
    ゲスト・スピーカー:増山久美氏(拓殖大学他非常勤講師)
    外からの開発とは異なり、貧農が相互扶助によって経済ネットワークを構築している事例を見る。この事例は、伝統的社会と近代社会、または農村社会と都市社会といった区分を超えたものである。
    ※この回までにグループワークと期末レポートのどちらにするか決めて授業スタッフに伝えること。
    課題文献(配布):
    増山久美(2008)「アイス王国を築いた村:メキシコ、ミチョアカン州の貧農たちの経済ネットワークと村の発展」

    第5回 (5/14) 近代化論に対する日本からの反論:内発的発展論とサブシステンス論
    柳田国男と南方熊楠の思想に大きく影響を受けた、鶴見和子の「内発的発展論」の意義とそれに対する批判、そして開発主義からの脱却をめざす「サブシステンス論」を紹介する。
    参考文献:
    鶴見和子(1996)『内発的発展論の展開』筑摩書房
    ――――(1999)『コレクション鶴見和子曼荼羅IX 環の巻 内発的発展論によるパラダイム転換』藤原書店
    郭洋春ほか(2005)『環境平和学―サブシステンスの危機にどう立ち向かうか』法律文化社
    岡本三夫・横山正樹編(1999)『平和学の現在』法律文化社
    郭洋春ほか(2004)『脱「開発」へのサブシステンス論―環境を平和学する! 2』法律文化社
    ビデオ『回生 鶴見和子の遺言 全2巻』藤原書店

    第6回 第6回(5/21) ディスカッション
    第4回、第5回の授業に対する質疑応答とディスカッションを行う。受講生はあらかじめ下記の課題文献を熟読しておくこと。
    課題文献:
    鶴見和子(1996)第1章「内発的発展論にむけて」第2章「内発的発展論の系譜」第3章「内発的発展論の原型―費孝通と柳田国男の比較」第4章「内発的発展論と模式論」『内発的発展論の展開』筑摩書房
    石田浩(1995)「書評『内発的発展と外向型発展―現代中国における交錯』」『アジア経済』1995年12月号
    李玲(1998)「郷鎮企業の発展に関する研究―中国政府の政策的対応との関連で」『アジア・アフリカ研究』1998年第4号Vol.38, No.4, 44−85頁。
    横山正樹(2005)「環境平和学としてのサブシステンス論」『環境平和学―サブシステンスの危機にどう立ち向かうか』法律文化社

    第7回 (5/28) フィリピンと日本の都市貧困層
    教育体験:笠井賢紀(政策・メディア研究科後期博士課程)
    「開発」の負の影響は途上国において貧困を生んでいる。「中心」と思われる先進国の都市部にも貧困は存在する。フィリピンと日本の都市貧困層を事例として紹介する。

    参考文献:
    青木秀男(2000)『現代日本の都市下層―寄せ場と野宿者と外国人労働者―』明石書店
    笠井賢紀(2009)「参加型行政と公共性―フィリピン・ケソン市の事例から―」慶應義塾大学湘南藤沢学会優秀修士論文
    木場紗綾(2006)「都市貧困をめぐる「政治利用」と住民運動の主体性―マニラ市パローラの事例から―」『国際協力論集』13-3、神戸大学大学院国際協力科
    日下渉(2007)「秩序構築の闘争と都市貧困層のエイジェンシー―マニラ首都圏における街頭商人の事例から―」『アジア研究』53-4、アジア政経学会
    倉沢愛子編著(2007)『都市下層の生活構造と移動ネットワーク―ジャカルタ、東京、大阪、サン・クリストバルのフィールドワークによる実証―』明石書店

    第8回 (6/4) 貧困の枠組
    教育体験:笠井賢紀(政策・メディア研究科後期博士課程)
    ひとくちに「貧困」と言っても、国・地域、時代、用いる指標などによって、その概念は様々に異なる。代表的な貧困理論について論じる。
    参考文献:
    絵所秀紀ほか編著(2004)『貧困と開発』日本評論社
    スピッカー, ポール(2008)『貧困の概念―理解と応答のために―』生活書院
    Spicker, Paul et al. ed., 2006, Poverty: An International Glossary, 2nd edition, Zed Books Ltd., UK
    Sen, Amartya, 2000, Development as Freedom, Anchor Books (セン, アマルティア(2000)『自由と経済開発』日本経済新聞社)
    西川潤(2008)『データブック貧困』岩波書店

    第9回 (6/11) ディスカッション
    第8回、第9回の授業に対する質疑応答とディスカッションを行う。受講生はあらかじめ下記の課題文献を熟読しておくこと。
    課題文献:
    岩田正美(2007)第1章「格差論から貧困論へ」第2章「貧困の境界」『現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護―』筑摩書房
    日本寄せ場学会(2008)特集「貧困と排除」『寄せ場』第21号、れんが書房新社

    第10回 (6/18) 連帯経済論
    ネオリベラリズムのオルタナティブといわれている「連帯経済」の概念を歴史的かつ経済学的に整理したのち、メキシコ・チアパス州とブラジルの事例を考察する。
    課題文献:
    山本純一(2006)「連帯経済―人間中心の経済の再生をめざして」『月刊オルタ』2006年2月号
    ――――(2005)「連帯経済の構築と共同体の構造転換―メキシコ最貧困州チアパスの経験から」内橋克人・佐野誠編『ラテン・アメリカは警告する―「構造改革」日本の末来』新評論
    ――――(2004)『メキシコから世界が見える』集英社新書
    ――――(2005)「もうひとつの世界は可能か――第5回連帯経済ワークショップに参加して」『山本純一の視点』2005年11月14日号、http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/
    参考文献:
    西川潤・生活経済政策研究所編(2007)『連帯経済―グローバリゼーションへの対案』明石書店

    第11回 (6/25) FTPのフェアトレード
    担当者は、2006年から1年半にわたり、JICA(国際協力機構)草の根技術協力事業(支援型)のプロジェクトマネージャーとして、メキシコ・チアパス州のコーヒー生産者協同組合「マヤビニック」を支援してきた。そこで本プロジェクトの目的・概要・経過を説明した後、自立支援がいかに困難な課題であるかを事例に即して紹介、議論する。また、現在、プロジェクトは第2フェーズに入ろうとしている。現段階での、今後の展望も示す。
    課題文献:
    「山本純一の視点」のうち、JICA草の根技術協力に関するブログ(http://web.sfc.keio.ac.jp/~llamame/index.html)

    第12回 (7/2) ポスト開発論(期末レポート(選択者)の提出締切)
    ゲスト・スピーカー:北野収氏(独協大学教員)
    ネオリベラリズム、上からの開発、近代化への、メキシコにおける対抗運動について、運動の担い手であるNGO・市民社会の活動の実体と、その背景にある知識人の役割に関する解釈を接合する北野氏の最新の研究について講演を行っていただく。
    参考文献:
    ヴォルフガング・ザックス編(1996)『脱「開発」の時代―現代社会を解読するキイワード辞典』晶文社(とくにG・エステバ「開発」の章)
    北野収(2008)『南部メキシコの内発的発展とNGO―グローカル公共空間における学び・組織化・対抗運動』勁草書房

    第13回 (7/9) グループワーク「貧困と地域開発」(授業改善案の締め切り)
    本科目の総括として、標記テーマ(サブタイトルを自由に設定)についてグループごとにプレゼンテーションを行ない、質疑応答・ディスカッションをする。また、期末レポートの中から、優秀なものを数件選び、プレゼンテーションを行う。
    課題文献:
    内橋克人(2005)「日本「構造改革」論の虚実―ラテン・アメリカを既視感として」
    佐野誠(2005)「「失われた10年」を超えて―ラテン・アメリカの教訓」
    ※いずれも内橋克人・佐野誠編(2005)『ラテン・アメリカは警告する―「構造改革」日本の末来』新評論に所収


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    リアクションペーパー5回(50%)、出席(10%)、グループワークもしくは期末レポート(40%)、授業改善案(+α点)の成績を総合して評価する。


5. 履修上の注意・その他

    質疑応答と議論を活発にするため、課題文献を指定し、そのコピー集を配布する予定なので、事前によく読んでおくこと。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2009-03-17 10:56:54.441288


Powered by SOI Copyright(c) 2002-2016, Keio University Shonan Fujisawa Campus. All rights reserved.
このサイトの著作権について