慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス 授業概要(シラバス)
地域と社会(アジア・大洋州) (加茂 具樹)
1. 主題と目標/授業の手法など
本講義の対象は現代中国である。
急成長を続ける経済発展、世界の投資を吸収し続ける中国市場、その拡大する市場を武器にした外交戦略等々、いまや中国を抜きには世界もアジアも経済や政治を語ることはできない。しかし他方で、日中間をはじめとして、国際関係においてさまざまな緊張要因をも中国は作り出している。中国国内に目を向けると、経済発展の裏で貧富の格差は拡大し、また腐敗は深刻化し、人々と政府との緊張関係は時には暴動となって表れている。こうした中国の国内、国際問題は、一面からいえば全て中国政治および社会の統治能力(ガバナビリティ)と統治のあり方(ガバナンス)に強く関連している。本講義では、この中国のガバナンスとガバナビリティを検討し、中国の未来をデザインするための手がかりを得る。
現代中国において、そのガバナンスの核心は「中国共産党が政治社会を領導する」ことである。この「領導」の実態の分析をつうじて中国のガバナビリティが析出され、その結果を以て中国の未来がデザインされることになる。
「中国共産党は如何に中国の政治社会を領導しているのか?」
本講義は、この一点を明らかにすることを目的とする。
2. 教材・参考文献
参考書として下記の文献をあげておく。
小島朋之著『現代中国の政治―その理論と実践』(慶應義塾大学出版会、 1999年)。
国分良成編『中国の統治能力』(慶應義塾大学出版会、2006年)。
加茂具樹著『現代中国政治と人民代表大会』(慶應義塾大学出版会、2006年)。
家近亮子、唐亮、松田康博編著『5分野から読み解く現代中国(新版)』(晃洋書房、2009年)。
毛里和子著『現代中国論(新版)』(名古屋大学出版会、2004年)。
岡部達味著『中国の対外戦略』(東京大学出版会、2002年)。
3. 授業計画
第1回 「天安門事件」のなかの中国共産党:強靱なガバナビリティ 1989年6月。中国では天安門事件がおきた。当時、多くの論者は「中国の体制崩壊は近い」と論じた。なぜ、そのように論じられ、なぜそのようにならなかったのか。 第2回 歴史のなかの中国共産党(1):なぜ中国社会は中国共産党の統治を選択したのか 「中国共産党による一党独裁」。なぜ中国の人民は、この体制を選択したのか。中華人民共和国建国までの歴史を概観する。 第3回 歴史のなかの中国共産党(2):なぜ改革開放政策が選択されたのか? 1978年からはじまったとされる「改革開放路線」。同路線はなぜ選択されたのか?現代中国史を概観する。 第4回 中華人民共和国憲法のなかの中国共産党 中華人民共和国憲法の前文には、中国共産党の国家に対する「領導」性が明記されている。一方第2条は、中華人民共和国の主権は人民にあることが明記されている。両者の関係を明らかにする。 第5回 「議会」のなかの中国共産党(1) 「ゴム印」と揶揄される人民代表大会。近年、人民代表大会の政治的権威が高まりつつある。なぜ高まりつつあるのか。高まりつつあることは中国政治にどのような影響を及ぼすのか? 第6回 「議会」のなかの中国共産党(2) 「便所の花瓶」と揶揄される政治協商会議。なぜ、「存在意義のない」政治協商会議が存在し続けるのか? 第7回 都市と農村のガバナンスのなかの中国共産党 近年、地方都市農村では「群体性事件」が頻発する。中国史の中で繰り返される「農民革命」が想起される。「群体性事件」は中国共産党のによる統治にどのように影響するのか。 第8回 武装力のなかの中国共産党:「党軍」なのか「国軍」なのか(1) 「政権は銃口から生まれる」。毛沢東の有名な言葉が示すとおり、共産党政権の生命線は武装力である人民解放軍を掌握すること(軍を党軍化すること)にある。しかし近年、その「党軍」が揺れている。 第9回 武装力のなかの中国共産党:「党軍」なのか「国軍」なのか(2) 外部講師による講義を予定している。 第10回 司法のなかの中国共産党
第11回 マスメディアのなかの中国共産党:「党の喉舌」(1)
第12回 マスメディアのなかの中国共産党:「党の喉舌」(2) 外部講師による講義を予定している。 第13回 10年後の中国
4. 提出課題・試験・成績評価の方法など
5. 履修上の注意・その他
6. 前提科目
7. 履修条件
8. 旧科目との関係
「リージョナルアナトミー論A」「リージョナルアナトミー論C」「リージョナルアナトミー論G」*これらの科目を進級、卒業あるいは修了に関わる科目の単位として修得済みの学生は、自由科目としての履修のみ可能。
9. 授業URL
2009-03-10 10:04:11.569282
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