KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


地球システム (福井 弘道

    2010年度春学期 木曜日2時限
    科目コード: 65150 / 2単位
    カテゴリ: 4.プログラム科目-併設科目(大学院)


1. 主題と目標/授業の手法など

     人類の生存に対して地球環境がどのような制約になっているかは、現代社会の中で生きていく人に、特に政策決定にかかわる人には必要な基礎知識である。そのためには、地球科学、生態学、経済学などから、総合的に取り組むことが必要とされる。
     本講義では、地球を一つの巨大な「統合システム」として理解し、システム概念を軸にして、自然界・生物界・人類社会の3つのサブシステムの相互作用を検討することが求められる。ただし、個々 の知識よりは、全体像を、歴史観や部分の関係性からつかむことが重要で、自然科学の法則や数量の取り扱いに慣れ、あるシステムの変動が、他のシステムにどのように、どの程度影響するかといった、勘所をつかむことがポイントとなる。
     たとえば、地球の大気圏・水圏は、地球の固体部分に比べれば薄い層だが、人類を含む生物の生存環境として重要である。この中では、水が、固体・液体・ 気体の3相の変化をしながら循環している。また、エネルギーは、太陽から光として入射し、宇宙空間へ赤外線として出ていくまでに、大気や海洋の運動を起こし、その運動によって輸送されている。世界の気候の寒暖・乾湿の分布を決めているのは、このような全地球規模のエネルギーと水の循環である。さらに、気候 の変動の原因を考えるためには、大気・海洋・雪氷などを総合し、相互に作用をおよぼしあう「気候システム」と呼ばれるシステムとして理解することが必要である。
     講義では、喫緊の課題である地球温暖化問題をとりあげ、気候システムの現状と歴史を概観し、とくにその中で水がどこにどれだけ存在し、どのように循環しているのかを見ていく。これは 水資源や水に関する自然災害を考える背景ともなる。また、二酸化炭素などの温室効果による気候変化のしくみ、脱温暖化や低炭素社会などの考え方も紹介する。
     最後に、今日の地球環境問題に見るように、人間の意志決定の自由度を持った自然科学の可能性、即ち、将来の予測性から一歩進んだ計画性を包含する自然科学のあり方についても言及する。


2. 教材・参考文献

    教科書は指定しないが、講義と半分程度の内容が重なる本として次の本を勧める。

    ・赤祖父俊一(2008)「正しく知る地球温暖化」(誠文堂新光社)
    ・T.E.グレーデル, P.J.クルッツェン (1995, 日本語版1997)「気候変動」(日経サイエンス社)
    ・小倉 義光 (1999)「一般気象学(第2版)」(東京大学出版会)
    ・島津 康男, 岸保 勘三郎, 高野 健三 (1975)「自然の数理」(筑摩書房)
    そのほか、参考文献・情報源は、講義中およびWeb上で紹介する予定。
    またビデオ等を適宜紹介、利用する。

     読んでおくと理解を助けると思われる参考書等。
    ・「地球システム科学」(岩波 地球惑星科学講座2)
    ・「気候変動論」(岩波 地球惑星科学講座11)
    ・熊澤峰夫ほか(2002)「全地球史解読」(東京大学出版会)
    ・H.T.オダム「人間自然エネルギー」(共立出版)
    ・和田 英太郎 (2002)「地球生態学」(岩波 環境学入門 3)
    ・松田 裕之 (2004)「ゼロからわかる生態学」(共立出版)
    ・S.R. ワート (2003, 日本語版 2005)「温暖化の〈発見〉とは何か」(みすず書房)
    ・高橋 裕 (2003): 「地球の水が危ない」(岩波新書)


3. 授業計画

    第1回 ガイダンス、地球トータルシステムの考え方
    講義の計画
    地球概観、システムとは。
    地球トータルシステム(自然、生態、人間)の考え方

    第2回 地球の歴史
    全地球史解読プロジェクト
     地球史概説
     生命と地球の共進化

    第3回 自然科学で地球をみる --大気や水の定量的把握
    自然科学のものの見方
     物理学の要用 
     物理的概念の導入 質量保存、エネルぎー保存、運動方程式
    水の多様な形ー大気中の水蒸気、海洋、陸水、雪氷

    第4回 地球のエネルギー収支−太陽放射と地球放射
    開放定常系としての地球
     全球平均の収支
     緯度・季節による違い
     大気の大循環

    第5回 地球システムにおける生態システムの考え方
    生態システムの歴史
    生態システムの分類
    生態システムの価値

    第6回 地球システムにおける人間システムの考え方
    人間システムの歴史
    人間システムの特徴
    人間システムの将来

    第7回 自然システムの中での海洋と陸域の役割
    海洋の混合層、表層、深層
    陸上における水の形態:河川、湖沼、土壌水分、地下水、雪氷
    エネルギー収支、水収支でとらえた海と陸のコントラスト

    第8回 地球の気候変動−地球温暖化のしくみ
    温暖化ガスと地表面温度
    気候システムのフィードバック
    温暖化予測の実情−なぜ予測が難しいのか

    第9回 地球環境の変動の歴史−気候変動から
    46億年の地球史の中で気候変動についてわかっていること
    最近百万年の氷期・間氷期サイクル
    人間活動と地球変動
     IPCC第4次報告書から地球温暖化研究最前線

    第10回 現代の地球に関する自然科学的情報
    観測・測定でとらえた現代の地球
     GEOSS、衛星リモートセンシング、フィールドセンシング
    地球データマップ、デジタルアース
    データの探索と発表

    第11回 現代の地球に関する社会科学的情報
    社会統計でとらえた現代の地球
     UN、EU、CIESINのアプローチ
    地球データマップ、デジタルアース
    データの探索と発表

    第12回 地球に関する情報の共有と利用−デジタルアースの構築
    科学者コミュニティの活動
    国際機関の活動
    NGO,その他
    地球温暖化をめぐる最近の論争

    第13回 地球の将来を考える
    地球環境問題とは
    地球環境問題への対応
    ジオインフォマティクスからのアプローチ
    講義の最終課題の考え方


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    期末レポート (論述と計算の両方の問題に答えること)
    講義への参加や理解度を確認するために、簡単な小レポート課題を適宜出す。


5. 履修上の注意・その他

     高校理科系で学ぶ程度の、物理(力学、熱力学)、化学(分子、相変化)や数学(微分積分、ベクトル)の概念が理解されていることが、望ましい。高校で履修していることを前提とせずに説明するつもりではあるが、特にこれまでに勉強したことがない人は、並行して高校程度の本を参照して自習してほしい(その例となる本を指定書として置く)。
     レポート課題で使う計算は、おもに四則演算である。平方根、指数・対数、 三角関数なども使うかもしれないが、電卓などで計算可能な程度とする。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2010-03-03 17:41:17.263567


Powered by SOI Copyright(c) 2002-2019, Keio University Shonan Fujisawa Campus. All rights reserved.
このサイトの著作権について