KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


ネットワーク産業論 (夏野 剛

    2010年度春学期 月曜日4時限
    科目コード: 65100 / 2単位
    カテゴリ: 4.プログラム科目-併設科目(大学院)


1. 主題と目標/授業の手法など

    1990年代後半からの爆発的なインターネットの普及、およびコンピューターハード・ソフト技術の進化は社会・経済、そして国民の生活に大きな革新をもたらした。インターネットを通じた商取引の規模が拡大するとともに、製造、流通、マーケティング、販売チャネルといった企業行動のすべてのレイヤーで変化が起きた。企業の情報システムは革新的に進化するとともに、その情報がネットを通じて消費者にもアクセスできるようになることで、市場の情報の非対称性が緩和され、消費行動にも大きな変化を及ぼしつつある。また、ITによる技術革新は、証券市場の電子化、電子マネーの台頭、デジタルコンテンツ流通の拡大、電子機器のネット化、携帯電話のマルチメディア化など、数多くの社会経済現象を生み出し、それらの社会・経済全体に与えている影響は、まさに「革命」とも呼べる、大きな国民生活の変化を生み出している。
    IT革命は企業経営のあり方にも大きな課題を突きつけている。日本企業が強みとしてきた従来の経営システムが通用しなくなってきているのだ。情報の非対称性を前提としたピラミッド的人事システム、右肩上がりの経済成長を前提とした年功序列システム、企業内情報共有を最重視した家族主義とも言える終身雇用システムなどは、IT時代にはそぐわないものになってきているが、多くの大企業でこの根本構造の改革に手をつけられずにいるのもまた実態である。今、企業にはIT革命のスピードについていくための経営が求められているが、多くの経営者はITとは無縁の世代であるという矛盾も露呈している。
    本講では、IT革命によって「何が変わったのか」を、マクロ・ミクロの視点から幅広く概説し、その社会・経済的意義を再認識するとともに、弊害や負の側面についても触れていく。まさに受講者が、この十数年間、自ら実体験してきた社会変化のもつ、経済学的意義、経営学的意義、社会学的意義を説明し、ネットワーク産業論として体系的に概説していく。
    受講対象者は、将来IT産業に関る方だけでなく、あらゆる分野の経営、政策、研究に従事しようとする方とし、講義の内容も、ITを活用した経営手法といった方法論にとどまらないよう考慮していく。


2. 教材・参考文献

    http://it.nikkei.co.jp/business/column/natsuno.aspx


3. 授業計画

    第1回 ネットワーク産業の特質とIT革命
    ➢ 講義テーマ
     IT革命を取り巻く時代背景
     IT革命で何が変わったのか。
     本講の目的と内容説明
    ➢ キーワード
    情報の非対称性、技術のコモディティー化、多様性、eコマース、ダイレクトアクセス

    第2回 ネットワーク環境の変化とIT各プレイヤーの戦略分析
    ➢ 講義テーマ
     ケータイ、PCを取り巻くネットワーク環境の変化とビジネスモデル
     IT主要プレーヤーの戦略
    ➢ キーワード
    First Mover Advantage(先行者利得)、ビジネスモデル、

    第3回 ネットワーク産業論への複雑系的アプローチ
    ➢ 講義テーマ
     ネットワーク産業を理解するためのコア知識
    ➢ キーワード
    創発、ポジティブフィードバック、外部経済性、デファクトスタンダード

    第4回 演習テーマプレゼン
     各グループごとに発表テーマのプレゼンを行う。
     なぜそのテーマを選んだか(問題提起)、どんな結論を想像しているか(仮説)、どんなアプローチで演習をすすめていくか(方法)を含むこと。

    第5回 標準化の研究

    ➢ 講義テーマ
     eチケットの意義とANAのe戦略
     顧客囲い込み、顧客ロイヤリティ
     旅行代理店の役割
    ➢ キーワード
    FFP(フリークエントフライヤープログラム)、eチケット、webチェックイン、SKIP、非接触ICカード、おさいふケータイ

    第6回 事例研究(1)「航空業界」ゲストスピーカー from ANA
    ➢ 講義テーマ
     標準化の意義と功罪
     デファクトとデジュールの違い
     ゲーム理論的考察
    ➢ キーワード
    ブルーレイとHDDVD(VHSとベータ)、WiiとPS3、3G、PHS、地デジ・ワンセグ、おサイフケータイ

    第7回 メディアの変貌
    ➢ 講義テーマ
     メディアの役割の変化
     マスメディアからインタラクティブメディアへ
     ビジネスモデルの崩壊
    ➢ キーワード
    放送と通信の融合、UGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)、広告と課金モデル

    第8回 事例研究(2)「eコマース」ゲストスピーカー from 楽天
    ➢ 講義テーマ
     日本最大のコマースサイト楽天の成長戦略
     ショッピングのエンターテイメント化
    ➢ キーワード
    プラットフォーム、シナジー、オークション、モバイル、スポーツ

    第9回 マーケティングと顧客リレーションシップの変貌
    ➢ 講義テーマ
     ネット広告の台頭
     インタラクティブメディアの優位点
     インプレッション(印象)からエフィシェンシー(効率)へ
     データベースマーケティングは万能か?
    ➢ キーワード
    リスティング広告、カスタマイゼーション、視聴率とクリックレート、ターゲット広告、eコマース、囲い込み、フリークエントプログラム、二八の法則

    第10回 貨幣流通システムの変貌
    ➢ 講義テーマ
     現金決済から電子決済へ
     電子マネーの台頭
     電子決済のビジネスモデル
    ➢ キーワード
    クレジット、デビット、SuiCa、Edy、iD、ポイント

    第11回 事例研究(3)「リアルとの連動」ゲストスピーカー fromマクドナルド
    ➢ 講義テーマ
     ファーストフードと電子クーポン
     集客のメカニズム
    ➢ キーワード
    eクーポン、リピート率、購買単価、リモート注文

    第12回 演習最終発表(1)
     各グループごとに発表テーマのプレゼンを行う。

    第13回 演習最終発表(2)とコースのまとめ
     各グループごとに発表テーマのプレゼンを行う。
     IT革命の勝者になるために必要なこと


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    課題提出(いまだにIT革命が及んでいない分野・ビジネスをピックアップし、それがIT化されるとどんな可能性があるかをまとめる)50%
    ミニワーク(毎回の授業の最後に課される課題に対して自分の意見を簡潔にまとめ提出する)30%
    クラスパーティシペーション(発言回数)20%


5. 履修上の注意・その他

    なし


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    特になし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2010-03-09 14:23:33.878522


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