KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


イスラームとイスラーム圏 (奥田 敦

    2016年度秋学期 金曜日4時限
    科目コード: C1132 / 2単位
    カテゴリ: 9.先端科目-総合政策系(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    イスラーム神学の基本原理を学びながら、イスラーム圏を読み解くための新しい方法論の構築を模索すると同時に、イスラーム的視点から眺めたときのイスラーム圏についていくつかの具体例を提示する。
    イスラーム圏に対する理解は、 表層的でステレオタイプ化されたイメージや言説の域を出ないことが多く、しかも、イスラーム圏では「現実」と「真実」の間にも大きな乖離があり、その実相がなかなか捉えられない。
    こうした状況を是正するために、 この講義では、 イスラームの教えそれ自体から方法論を導き出すという立場から、イスラーム神学の基本的な教理を紹介しながら、 今なお拡大を続けるイスラーム圏を理解するための最適な方法論を、いくつかのトピックを取り上げながら構築していく。
    秋学期中にアラブ人学生歓迎プログラムで来日予定のアラブ人学生たちから、母国についてのプレゼンテーションや、期間中の研究成果のプレゼンテーションを聞く機会も設ける。
    「彼らが何者であるかを明らかにするのではなく、彼らとともに何者になることによって、われわれと呼び合える関係になりうるのか」を考える契機になればと思う。
    なお、今学期、第9回から第11回は、大学院博士課程在籍者による教育体験(実習授業)として行う。


2. 教材・参考文献

    『フサイニー師「イスラーム神学50の教理」タウヒード学入門』(奥田敦訳・著)慶應義塾大学出版会、2000年。
    『イスラームの人権』(奥田敦著)慶應義塾大学出版会、2005年。
    『「正しい戦争」という思想』(山内進編著)勁草書房、2006年。
    『法と身体』国際書房、2004年。
    『媒介言語論を学ぶ人のために』(木村・渡辺編著)世界思想社、2009年。
    『協働体主義』(田島英一・山本純一編著)慶應義塾大学出版会、2011年。
    『イスラームの豊かさを考える』(奥田敦・中田考編著)丸善プラネット、2011年。
    『体制転換とガバナンス』(市川・稲垣・奥田編著)ミネルヴァ書房、2013年。


3. 授業計画

    第1回 イスラーム世界をどう向き合うか〜方法論としてのイスラームとは〜
    イスラームの3層と、イスラームの教えの3つの柱、宗教と文化の関係などを明らかにしながら、SFCにおけるイスラーム研究の3つの柱(イスラーム基礎研究・イスラーム地域研究・イスラーム応用研究)について紹介する。真理の探究者にとってのイスラーム世界との向き合い方についての考察でもある。

    第2回 イスラーム基礎研究(1)イスラーム神学の基本的概念〜タウヒードとは何か〜
    なぜイスラーム神学からはじめるのかを明らかにしながら、タウヒードをはじめとするイスラーム神学の基本概念を紹介する。

    第3回 イスラーム基礎研究(2)アッラーについて(1)
    アッラーが存在するとはどういうことなのかを中心に、アッラーの属性の中から、「存在」「古さ」「不滅」「生起物と相容れない」という4つを紹介する。

    第4回 イスラーム基礎研究(3)アッラーについて(2)
    神が一つであるとはどういうことなのか。「自存」「唯一性」という神の属性を中心に考察する。偶像崇拝や三位一体がなぜ受け入れられないのかについても考える。

    第5回 イスラーム基礎研究(4)アッラーについて(3)
    「力能」「意志」「知」「生」「視」「聴」「語り」という存在的概念的な神の属性を紹介しながら、神は何を行なうのかについて考察する。

    第6回 イスラーム基礎研究(4)預言者について、クルアーンについて
    聖クルアーンの中に25名が登場する、アッラーからの御使いについて、彼らの属性を紹介する。また、クルアーンについて、それがいかなる書物なのかを考え、マッカ啓示からいくつかを取り上げて、タウヒードの世界を垣間見る。

    第7回 アラブ人が語るアラブ
    奥田敦研究会の活動の一環である「第14回アラブ人学生歓迎プログラム(ASP2016)」にて来日中のアラブ人学生5名(予定)の一人一人に自分の出身地について語ってもらう。質疑応答の時間も設ける。

    第8回 アラブ人が見た日本
    ASP(アラブ人学生歓迎プログラム)で来日中のアラブ人学生が期間中に作成した日本語によるレポート発表会。2週間の滞在の成果を聞く。(11月11日の補講日に実施します)

    第9回 イスラーム基礎研究(5)天使と人間
    天使はなぜ人間に祈るのかを中心に天使について考えながら、また、ラッバーニーヤとインサーニーヤの対比から、人間とは何者であるのかについて考える。

    第10回 イスラーム基礎研究(6)死と自由
    来世や神慮・天命に対する信仰との関係も踏まえながら、人間の自由について考える。イスラーム教徒はなぜ自殺をしないのかについても考えたい。

    第11回 イスラーム基礎研究(7)時間について
    キリスト教を直線的時間館、仏教を円環的時間観としたときイスラームの時間観はどのように言い表せるのか。イスラームの包括性を時間に関する三つの宗教の比較から論じていく。

    第12回 イスラーム応用研究の展開(1)タウヒード的市民社会論
    イスラームにおける市民社会論について、ユダヤ・キリスト教的な文脈における市民社会論と対比しながら、その重要性と必要性を考える。

    第13回 イスラーム応用研究の展開(2)ハラールとハラーム
    イスラームにおいて豚やアルコールが禁じられるのはなぜなのか。ハラール認証とは何か。ハラールビジネスの最前線で何が起きているのか、イスラーム教徒たちとどう向き合うかなどについて、ハラール・ハラームの基礎概念も明らかにしながら考察する。

    第14回 イスラーム応用研究の展開(3)現世でも来世でもよい生き方
    イスラームにおける死生観、時間の観念、来世や神慮・天命に対する信仰との関係も踏まえながら、人間の自由について考察すると同時に、信仰のまっすぐな道からの逸脱を意味するビドゥアについて、シャーティビーの『イアティサーム』を中心に考察するとともに、現世でもよく、来世でもよい生き方について考える。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    毎回の授業での出席カードと、学期末の試験期間に行う試験の成績とを併せて評価する。
    詳しくは授業時間内で説明する。


5. 履修上の注意・その他

    授業中の飲食は厳に慎んでください。
    授業には、イスラームからのアラビヤ語による概念が多数出てきますが、講義は日本語で行いますので、アラビヤ語未履修者でも十分履修できます。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2016-08-19 01:01:18.61505


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