KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


音楽と脳 (藤井 進也

    2017年度春学期 火曜日2時限
    科目コード: C2121 / 2単位
    カテゴリ: 10.先端科目-環境情報系(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    音楽と脳に関する最先端の研究知見を学び,自らのリアルな体験に基づいてその意味を考えることが本授業の主題であり目標です.普段我々が何気なく聴いたり楽しんだりしている音楽は,実はヒトの進化,発達,文化のダイナミクスや,ヒトの社会性や創造性,知覚,認知,運動,記憶,情動,学習といったヒトの脳機能を理解する上で,極めて重要な研究対象です.授業は講義中心ですが,音や音楽を流しながらの簡単な実験のデモンストレーション等も行います.研究知見を理解した上で,受講者一人一人が自らの体験に基づき音楽について深く思考することが求められます.本授業を通じて,音楽の存在価を再考し,これまでにない音楽の在り方や表現方法,新たな音楽の社会応用性を見出すことを目指してください.


2. 教材・参考文献

    1. オリヴァー・サックス. 音楽嗜好症(ミュージコフィリア): 脳神経科医と音楽に憑かれた人々. ハヤカワ・ノンフィクション文庫, 2010, 542p,ISBN.9784152091475(日本語)
    2. Peretz, Isabelle; Zatorre, Robert J. The Cognitive Neuroscience of Music. Oxford University Press, 2003. http://www.hugoribeiro.com.br/biblioteca-digital/Peretez_Zatorre-Neuroscience_of_Music.pdf, (accessed 2017-01-21).
    3. Wan, Catherine Y; Schlaug, Gottfried. Music making as a tool for promoting brain plasticity across the life span. The Neuroscientist. 2010, 16(5), p. 566-577. http://www.musicianbrain.com/papers/Wan_Schlaug_MusicMaking_BrainPlasticity.pdf, (accessed 2017-01-21).
    4. Zatorre, Robert J; Salimpoor, Valorie N. From perception to pleasure: Music and its neural substrates. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2013, 110(2), p. 10430-10437. http://www.zlab.mcgill.ca/docs/Zatorre_&_Salimpoor_PNAS_2013.pdf, (accessed 2017-01-21).


3. 授業計画

    第1回 音楽と脳
    我々ヒトは太古の時代より歌い踊り音楽を奏でてきました.ヒトの脳には,なぜ音楽を楽しむ機能が備わっているのでしょう?本講義への導入を行うと共に,授業の目的,計画,成績評価の方法について説明します.

    第2回 音楽の起源とヒトの進化
    ヒトの進化と音楽の起源に関する諸説(ダーウィンの性選択説,ピンカーの聴覚チーズケーキ説,パテルの変革技術説等)について解説します.

    第3回 ヒトの音楽性と文化
    ヒトの音楽性は文化的背景によらず共通といえるのでしょうか?アフリカ原住民を対象とした西洋音楽知覚実験等を紹介し,ヒトの音楽性と文化的影響について概説します.

    第4回 音波から神経信号へ
    音波の物理学的基礎,耳介-鼓膜-内耳の構造,音波から神経信号への変換や,聴性脳幹反応,蝸牛や一次聴覚野の周波数マップについて概説します.

    第5回 絶対音感の神経基盤
    絶対音感とは何か.大脳皮質聴覚野のコア-ベルト-パラベルト構造,絶対音感者のヘシュル回構造や聴覚神経回路のコネクティビティについて概説します.

    第6回 音楽に対する情動反応の神経基盤
    音楽聴取に伴う強烈な情動反応・生理反応,脳内でのドーパミン放出,音列パターンの知覚と報酬予測の関係について概説します.

    第7回 音楽リズムと拍子の知覚:音楽グルーヴの神経科学
    音楽のリズムや拍子について説明すると共に,脳内でリズムや拍子が知覚されるプロセス,リズムの複雑性と快感情の逆U字曲線関係,音楽グルーヴやトランスに関する近年の神経科学研究について概説します.

    第8回 踊る赤ちゃんと動物:リズム・発達・進化
    音楽の拍子に合わせて踊るオウムやアシカ,音楽リズムを学習するインコやチンパンジーの行動について紹介すると共に,乳児にみられる歌と踊りの前兆行動について解説します.

    第9回 ドラマーの身体運動制御研究
    世界最速ドラマーの筋活動,巧みな両手協調ドラミングの非線形力学系モデル,音楽家やダンサーの多関節協調や感覚運動同期に関して,最新の研究知見を紹介します.

    第10回 音楽トレーニングと脳の可塑的変化
    音楽家と非音楽家の脳機能構造の違いや,音楽トレーニングに伴う脳機能構造の変化について概説します.

    第11回 失音楽症:音痴者の脳
    失音楽症の症例を紹介すると共に,失音楽症を診断するためのテスト(モントリオール失音楽症テストやハーバードビート評価テスト)と,音痴者の脳構造について解説します.

    第12回 音楽と言語
    OPERA仮説やSEP仮説を紹介し,脳内における音楽と言語の情報処理プロセスの共通性と相違性について解説します.

    第13回 音楽とリハビリテーション
    失語症患者への Melodic Intonation Therapy (MIT) や,パーキンソン病患者への Rhythmic Auditory Stimulation (RAS) ,聴覚フィードバックを用いた運動リハビリテーション研究について解説し,音楽神経科学のリハビリテーションへの応用性を探ります.

    第14回 音楽・脳・未来
    これまでの講義を振り返ると共に,音楽と脳の研究がもたらす未来について展望し,授業を総括します.また,最終レポートの内容と評価方法について説明します.


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    出席(小レポート)と最終レポートの成績を総合して評価します.点数配分は小レポートが2点×2回(第1回・第14回)+3点×12回(第2回〜13回)=40点,最終レポートが60点とします.
    【小レポート】毎回の講義で,それぞれの講義内容に関連した小レポート(講義の感想や与えられた課題に対する小論文等)を課します.小レポートの用紙は授業開始後早い時間に配布し,授業時間内に回収します.レポート内容によって,その都度±1もしくは±2の加点・減点を行ないます.
    【最終レポート】全14回の講義終了後に最終レポートを課します.最終レポートとして,音楽と脳に関するオリジナル研究の立案書(プロポーザル)を提出してもらいます.研究プロポーザルには,研究の背景と仮説,実験方法,予想される実験結果とその考察を執筆してもらいます.研究としての面白さ,新規性,実現可能性,文章力,論理構成力等を総合的に評価し採点します.


5. 履修上の注意・その他

    なし


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    音楽と脳の研究につよい興味があること.


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2017-01-22 10:53:30.792646


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