KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


言語とヒューマニティ (國枝 孝弘

    2003年度春学期 水曜日1時限
    科目コード: 20230 / 2単位
    カテゴリ: 11.汎用-共通基盤科目(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

      この科目は、言語というパースペクティブから、哲学・歴史・文学・宗教・芸術といった人文科学諸分野を考察することを目的とする。特にその問題意識を人間という存在の定義におく。グローバリゼーションが喧伝されるこの現代において本当に 「普遍的」 な人間像を描くことができるのだろうか?人間の起源が解き明かされようとしている現代において、 「倫理的」・「哲学的」 な人間像は問われる価値を失っただろうか?この素朴で根源的な問いにたいし、 人間と言語の関係から考察していく。 具体的にはヨーロッパ近代社会の中で制度化された人間観、 20世紀におけるその崩壊と回復の営みを、 様々なテキストに照らし合わせてたどっていきながら、 21世紀の新しいヒューマニティを模索していく。


2. 教材・参考文献

    参考文献は各回の授業計画を参照のこと。


3. 授業計画

    第1回 第1回(4/9)ガイダンス(言葉と人間)

     私たちに最も身近な存在‐ことば。日常の観察から始めて、ことばについての探求が、ひろく人文科学の分野全体において大切なことを解説する。

     参考文献
     丸山圭三郎『ソシュールの思想』(岩波書店)
     斧谷彌守一『言葉の二十世紀』(ちくま学芸文庫)
     ジョージ・スタイナー『脱領域の知性』

    第2回 第2回(4/16)声と人間
     ソシュール言語学に見られる「言語の恣意性」に対立する立場から、「音」としての言語の特性に着目し、オーラル表現の多様性について考える。

     参考文献 
     川田順三『声』(ちくま学芸文庫)
     小沢昭一『ものがたり 芸能と社会』(白水社)
     兵藤裕己『<声>の国民国家・日本』(NHKブックス)
     工藤進『声』(白水社)

    第3回 第3回(5/7)書くこと・話すこと
     「名づけ」という具体的行為を通して、言語と世界の係りを探るとともに、文字という形に結晶化する言語の創造性について考える。

     参考文献
     白川静『回思九十年』(平凡社)
     田中克彦『名前と人間』(岩波新書)
     丹生谷貴志他『現代哲学の冒険 物語』(岩波書店)
     オング『声の文化・文字の文化』(藤原書店)

    第4回 第4回(5/14)言語の起源
     「ことばはどのように生まれたか」。この問いには常に私たちの起源は何かという問いも同時に含んでいる。つまりことばの共有=共同体の同一性の証しという考え方である。言語起源論を近代における共同体の模索の営みとして考察する。

     参考文献
     山田宏昭、『三点確保‐ロマン主義とナショナリスム』(新曜社)
     プラトン『クラチュロス』
     ジャン=ジャック・ルソー『言語起源論』
     ジェラール・ジュネット『ミモロジック』

    第5回 第5回(5/21)宗教と人間
     宗教とことばの関係は、次の2つの問題において顕著になる。ひとつは「表現できない至高体験」という言語化の否定。一方ことばによる世界の創造という、モノとことばとの一体性である。このふたつの問題に焦点をあて人間存在における宗教の位置付けについて考える。
     
     参考文献
     ブーバー『ハシディズム』(みすず書房)
     ジョルジュ・バタイユ『宗教の理論』(人文書院)
     ルドルフ・オットー『聖なるもの』(岩波文庫)
     田川健三『宗教とは何か?』(大和書房)理性的人間の解体?
     西谷修「<宗教>と近代 ― 世俗化のゆくえ」、『宗教への問い4 宗教と政治』(岩波書店)
     所収

    第6回 第6回(5/28)想像力と人間
     伝説や言い伝えなどの民衆的想像力を手がかりとして、人間の共同性とそれを支える言語表象について考える。特にこの回は「共同幻覚」の問題を扱う。

     参考文献
     岡田隆彦「生きる歓び」、『芸術の生活化』(小沢書店)所収
     川村二郎『銀河と地獄』(講談社)
     柳田国男『魂の行方』

    第7回 第7回(6/4)象徴と人間
    「たとえる」「くらべる」など人間の類推能力から出発し、人間がいかにこの現実世界だけでなく、象徴の、フィクションとも呼べる世界に生きているかと考察する。
     参考文献
     カッシーラー『人間』(岩波文庫)
     ジルベール・デュラン『象徴の想像力』(せりか書房)
     シャルル・ボードレール「交感」、『悪の華』(新潮文庫)その他。


    第8回 第8回(6/11)
    ミニレポートプレゼンテーション

    第9回 第9回(6/18)歴史と人間 
    記憶と想起による過去の再編成という立場から歴史叙述の問題を考える。特に物語と歴史の関係性について考察する。

     参考文献
     鵜飼哲『償いのアルケオロジー』(河出書房新社)
     野家啓一『物語の哲学』(岩波書店)
     香月洋一郎『記憶すること・記録すること』(山川出版社)

    第10回 第10回(6/25)個体と言語
    ことばと人間存在を、「個」をどのように表象するかという観点から考察する。具体的には近代合理主義における、個という単位、そこに内在する抽象性と普遍性という問題を取り上げる。

     参考文献
     トックヴィル『旧体制と大革命』(ちくま学芸文庫)
     アレント『全体主義の起源』(みすず書房)
     ハイデガー『ヒューマニズムについて』(ちくま学芸文庫)

    第11回 第11回(7/2)コミュニケーションと共同性
     第10回で扱った個人主義の問題を近代合理主義の到達としてとらえ、大衆化した社会における人と人のコミュニケーションについて考える。

      参考文献
     西谷修『不死のワンダーランド』(講談社学術文庫)
     塚原史『人間はなぜ非人間的になれるのか』(ちくま新書)

    第12回 第12回(7/9)文化の差異と多様性
     19世紀末から20世紀初頭の西洋における芸術運動を例に取り、理性・主体から離れて、無意味・無意識・「非人間」(ギョーム・アポリネール)へと走ったアヴァンギャルド運動を追う。

     参考文献
     塚原史『記号と反抗』(人文書院)
     トリスタン・ツァラ『ダダ宣言』(竹内書店新社)
     田之倉稔『イタリアのアヴァンギャルド』
    第12回(7/9)文化の差異と多様性
     19世紀末から20世紀初頭の西洋における芸術運動を例に取り、理性・主体から離れて、無意味・無意識・「非人間」(ギョーム・アポリネール)へと走ったアヴァンギャルド運動を追う。

     参考文献
     塚原史『記号と反抗』(人文書院)
     トリスタン・ツァラ『ダダ宣言』(竹内書店新社)
     田之倉稔『イタリアのアヴァンギャルド』

    第13回 第13回(7/16)詩と人間
     詩的言語というメッセージ性を離れた言語の特質と、詩的世界を生み出す人間の能力について考える。また、文学における伝承と独創性の問題を扱う。

      参考文献
     T・S・エリオット「伝統と個人の才能」、『文芸批評論』(岩波文庫)所収
     ウォルター・ベンヤミン「物語作者」、『ベンヤミンコレクション2エッセイの思想』(ちくま学 
     芸文庫) 所収
     西郷信綱『詩の発生』(未来社)


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    成績評価基準・提出課題
    成績は次の3つの課題を総合して評価する。
    1)ミニレポート(2回):おのおお25点
    3)最終レポート:50点

    ミニレポートについて
     授業の中から、自分が興味を持った主題を扱った回を2回選び、その主題を自分なりに発展させたミニレポートを提出。1回目の提出期限は5月28日。1回目〜5回目の授業の中からひとつ主題を選ぶ。2回目の提出期限は7月2日。6回目〜10回目の授業が対象。いずれも1200字程度。

     最終レポートは、後日課題をアナウンスする。


5. 履修上の注意・その他

    なし


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2003-03-25 13:43:17


Powered by SOI Copyright(c) 2002-2018, Keio University Shonan Fujisawa Campus. All rights reserved.
このサイトの著作権について