KGC


慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)


ガバナンス論 (曽根 泰教

    2003年度春学期 火曜日1時限
    科目コード: 45220 / 2単位
    カテゴリ: 25.先端開拓科目-環境情報-情報とメディア(学部)


1. 主題と目標/授業の手法など

    最近ではガバナンスが、 重要なキーワードとして使われていることが多くなりました。 一般的な用語となった今、 ガバナンスとは何かを改めて問うことには意味があります。 日本では 「統治」 とか 「協治」 などが使われ、 中国語では 「治理」 と訳されていますが、その内容はさまざまに使われいています。 ともすれば、 抽象的な概念の問題に終始しがちな 「ガバナンス」 問題を、 具体的な事例として、コーポレート・ガヴァナンスからはじめ、金融システムのガヴァナンス、グローバル・ガヴァナンス、さらにはサイバースペースにおけるガヴァナンスなどへと発展させて考えてみます。また、ここで扱おうとしている中心的な分析対象は、政治・行政・市場で、さらに、それら制度間のガヴァナンスの問題も考えてみます。
    学部の学生がこの授業を履修するには、意欲のある人、すでに政治や経済を勉強してきた人が望ましいといえます。
     
    SFC に政策・メディア研究科が作られたときに、 ガバナンスがキーワードとして、 以下のように位置付けられてきました。
    「制度、 組織、 集団などが持つ運営原理を理解することにより、 合意形成・意思決定・政策協調などを円滑に行えるようにする。 その運営原理の基礎にある規範・ルール・言語を知的ガバナンスとして学ぶ。 特に異なる思考方法を持つ代表的な制度のである市場・民主主義・組織の運営原理をメタレベルでとらえる。 とりわけ、 目標を設定・修正しながら行為・行動する主体が、 環境との相互作用の中で、 自在性を発揮しながら、 組織運営を行う過程に注目する。 また、 制度間、 組織間の相互作用の中で発生する、 異なるガバナンス間の関係をいかなるメカニズムで解決するのかを理解する。 特に、 政治、 行政、 市場などの制度相互間の関係とその時の組織がいかなる役割を果たしているのかを、 ガバナンスの問題として扱う。」


2. 教材・参考文献

    田村達也『コーポレート・ガバナンス』(中公新書、2002年)
    伊丹敬之『日本型コーポレートガバナンス』(日本経済新聞社、2000年)
    渡辺昭夫・土山実男『グローバル・ガヴァナンス』(東京大学出版会、2001年)
    ジョセフ・E・スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店、2002年)
    H・ドレイファス『インターネットについて』(産業図書、2002年)
    土屋大洋『情報とグローバル・ガバナンス』(慶應大学出版会、2001年)


3. 授業計画

    第1回 ガヴァナンスとは  治理、協治、統治?
    一体何がガヴァナンスの問題なのか。具体的には「金融危機」に見るGovernance問題、エンロン破綻に見るガヴァナンス問題など、問題の所在をあきらかにします。

    第2回 「ガヴァナンス論」の背景
    ガヴァナンスを考えるときに、さまざまな概念が役にたちます。
    複雑系、場、合意形成、リアルタイム、意思決定、
    政治、行政、市場、組織、制度、制度間のガヴァナンスまでの広がりをあることを扱います。

    第3回 コーポレート・ガヴァナンスから「ガヴァナンス問題を考えてみる」
    深尾光洋『コーポレート・ガバナンス入門』(ちくま新書、1999年
    田村達也『コーポレート・ガバナンス』(中公新書、2002年)
    ハーバード・ビジネス・レビュー・ブックス『コーポレート・ガバナンス』(ダイヤモンド社、2001年)
    使い、ガヴァナンス概念の基本を探ってみます。

    第4回 日本型コーポレートガヴァナンスはあるのか
    エンロン事件以来、米国企業のガヴァナンス問題という深刻な事例が出てきました。また、アメリカのガヴァナンス概念への批判が多数出てきています。
    ロナルド・ドーア『日本型資本主義と市場主義の衝突―日・独対アングロサクソン』(東洋経済新報社、2001年)と伊丹敬之『日本型コーポレートガバナンス』(日本経済新聞社、2000年)とを見て、日本型ガヴァナンスがあり得るかを探ってみます。

    第5回 バブル発生は誰の責任か:政策の失敗はなぜ起こった
    バブルの発生における失敗もさることながら、その処理でなぜ数多くの失敗を繰り返したのかを考えてみます。
    小林慶一郎・加藤創太『日本経済の罠』(日本経済新聞社、2001年)
    P・クルーグマン『恐慌の罠』(中央公論社、2002年)
    A・ポーゼン『日本経済の再挑戦』(東洋経済新報社、1999年)
    R・カッツ『腐りゆく日本というシステム』(東洋経済新報社、1999年)

    第6回 政府と市場のGovernance
    政府は何をすべきなのか(すべきでないのか)?がテーマです。
    青木昌彦、奥野正寛、岡崎哲二『市場の役割、国家の役割』(東洋経済新報社、1999年)
    D・ヤーギン『市場対国家 上下』(日本経済新聞社、1998)

    第7回 グローバル・ガヴァナンス
    「アジアの金融危機とIMFの失敗?」を例に、IMFは失敗したのか?何が問題だったのか?ガヴァナンスの問題をグローバル・ガヴァナンスの例を使って考えてみます。
    渡辺昭夫・土山実男『グローバル・ガヴァナンス』(東京大学出版会、2001年)
    ジョセフ・E・スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店、2002年)
    Martin Feldstein, "Reforming the IMF," Foreign Affairs, vol.77, no.2, 1998
    Stanley Fisher,"In Defense of the IMF," Foreign Affairs, vol. 77, no.4, 1998.
    IMF, "Reforming World Finance: Lessons from a Crisis," (http://www.imf.org)
    「通貨危機と資本主義の行方−−スティグリッツさんに聞く」(毎日新聞),2001.03.05

    第8回 民主主義の実験は可能か(討論民主主義)
    メディアの発達の下で、民主主義は変わりうるのか、変わるとしたらどのような方向か。実験として、討論民主主義(Deliberative Democracy)を考えてみます。(ビデオテープ)
    <参考文献>
    J. Fishkin, The Voice of the People (Yale University Press,1995)
    J. Fishkin, Democracy and Deliberation (Yale University Press, 1991)
    "Deliberative Poll", The Independent , May 9, 1994
    「政治とメディア」、『朝日新聞』(1994年8月6日)
    ダール『デモクラシーとは何か』(岩波書店、2001年)

    第9回 サイバーデモクラシーの条件とは何か
    サイバーデモクラシー(cyberdemocracy or democracy@cyberspace)は遠い将来の話にしか過ぎないのか、それとも、今こそ論ずるべきことなのか。電子投票、電子会議システムなどの技術的な問題に加え,何をサイバーデモクラシーでは考えないといけないのか。
    I・バッジ『直接民主主制の挑戦』(新曜社)2000
    曽根泰教「仮想現実と現実的仮想」(『中央公論』1999年7月号)
    曽根泰教「情報社会と公共性―サイバースペースは『公共空間』たりうるか」(佐々木毅・金泰昌編『公共哲学〈10〉』東京大学出版会、2002年)

    第10回 ネットワークのGovernance
    「ネットワーク・ガヴァナンス」を考えてみます。誰がどう運営するのか、
    http://www.anr.org/web/html/output/2002/icann0304.htmなどを参考に議論します。H・ドレイファス『インターネットについて』(産業図書、2002年)
    土屋大洋『情報とグローバル・ガバナンス』(慶應大学出版会、2001年)
    また、ネットワークに出現したヴァーチャルな世界をどう理解するのか、国家も市場も貨幣も仮想現実ではないのか、インターネットのその先の話しとして、仮想現実の問題を考えてみます。
    曽根泰教「仮想現実と現実的仮想」(『中央公論』1999年7月号)
    M・ハイム『仮想現実のメタフィジックス』(岩波書店、1995年)
    P・ケオー、西垣通監修『ヴァーチャルという思想』(NTT出版、1997年)
    立花隆『インターネットはグローバル・ブレイン』(講談社、1997年)
    佐藤俊樹『ノイマンの夢・近代の欲望』(講談社選書メチエ、1996年)

    第11回 ローカル・ガヴァナンスは可能か
    東京都の銀行に対する外形標準課税はいかなる意味を持つものか、分権のシステムは設計可能か、自律・分散・協調とは言葉では簡単であるが、実行できるのか、中央・地方の政府間ガヴァナンスの問題を考えてみます。
    <参考文献>
    斎藤精一郎他『日本再編計画』(PHP、1996年)
    村松岐夫『地方自治』(東大出版会、1988年)
    西尾勝『未完の分権改革』(岩波書店、1999) 
    ・地方分権推進委員会ホームページ http://www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/bunken.html
    ・地方分権推進会議ホームページ http://www8.cao.go.jp/bunken/index.html

    第12回 Good Governance and Development
    1990年代に入りODAの原理にGood Governanceが入ってきたました。それは、民主主義とは違うのか。Good Governanceを主張することで、途上国をどうしようというのかを論じます。
    <参考文献>
    『ODA4指針』1991年4月10日
    『政府開発援助大綱』1992年6月30日

    第13回 Governance論まとめ
    ガヴァナンスは、コーポレート・ガヴァナンスやグローバル・ガヴァナンスなど、それぞれの分野の中で論ずることが多いのですが、この授業では、ガヴァナンスをキー概念にして、一般論へと発展させる試みをしました。そのまとめをこの回で行います。


4. 提出課題・試験・成績評価の方法など

    <授業の方法>
     各回の設問に対して、発表者2名、討論者2−3名によるパネル形式の討論を中心に授業を行います。各問題はいずれもガヴァナンスに関わる大問題であるので、さまざまな解答の方法があります。パネリスト以外も討論参加する必要があるので、各回ごとに準備してくることが望ましいです。
    [発表方法]WWWやPower Pointなどのソフト, OHP, Videoが利用できるので、各自、準備をすることが必要です。登録者全員をウェッブにのせます。なお利用法については、TAに相談してください。
    [レポート] 最終的なレポートは、ガヴァナンスに関わる、分析か政策提言が要求されます。どんな問題でも、政策として提起できるように、議論を組み立てておくことが必要です。
    ただし、各回の授業はすべて政策に結びつくことまでは要求しない。


5. 履修上の注意・その他

    この授業は、元来が大学院の共通科目として設置されていたものです。学部の学生でも十分履修可能ですが、何が議論されているのかを理解するためには、十分な準備と意欲が必要です。


6. 前提科目

    なし


7. 履修条件

    なし


8. 旧科目との関係

    なし


9. 授業URL


2003-03-17 08:51:17


Powered by SOI Copyright(c) 2002-2018, Keio University Shonan Fujisawa Campus. All rights reserved.
このサイトの著作権について